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折々の言葉 / 本物の戦略

実のある戦略を樹てていますか?(1)

Posted on 2013-01-17

 私自身、一番経営の中で得意とするところは経営戦略の策定です。

 過去私が経営を任されていた会社の成長の要因の一つは的確な経営戦略を樹てたことだと自負しています。もちろんこの戦略はひとりでできるわけではありません。たくさんの社員をヒアリングなどで巻き込んで策定するのですが、戦略策定の過程で見つけたことがあります。

 裏を返せば、本質から外れているにもかかわらず、戦略案を一般の人の目を引きやすく、かつ、もっともらしく見せるテクニックがあるので、経営者には、以下のポイントに留意して戦略のエセ部分を見抜く力が必要です。

1.戦略の基本構造を立体的に描く

 基本的な構造項目すべてを網羅した教科書的な戦略なものになることを回避したいです。教科書的な戦略は一見綺麗で合理的に見えますが、構成が平面的になりやすく、実践にあたって実効性に疑問を持ちます。

  • 顧客(現在顧客と潜在顧客)と社員(正社員、契約社員全て)を最上位に置き、
  • 顧客の満足と社員の働きやすさと幸せを実現する仕組みや仕掛けに重点を置き、
  • それを実現する組織や制度等の全体を組み立てる戦略構造にすれば良いのです。

 すべてをなんとかしたいという思いはわかりますが、スピードが求められるので現実にはそれほどのリソースと期間はないはずです。

2.優先課題を設定する

 先述のように顧客と社員を優先課題の第一義に設定し、置かれた現状が何故(Why)そうなるのかを冷静に分析し、具体策を策定して、一貫性をもってそれを一体的に実行することになります。

 私は、その戦略を実行に移すことまでを含めて責任を持たなければ本物とは言えない、という考えを持っています。「私は戦略を作る人です」、「あなたがそれを実行する人です」と、戦略の中で実践プロセスを分離すると、単なる評論家的な戦略で責任感の欠如した形骸作品に成り下がってしまいかねないからです。

 私の経験でも、この陥りやすい失敗について自分自身が立てた戦略経験で明確に分かります。私が過去に経営を託されていた会社でも、「第x次中期計画」などと称して、約3~5年ごとに戦略を策定していましたが、その中でも、最初に立案した戦略が基本構造は一番明確でした。姿形は少し幼稚ですが、顧客と社員のことを明確に最上位に置いて作を練っています。

 会社が実質倒産の憂き目に瀕していたので、会社がどう生き延びようかと必死に顧客に焦点を当てで現状を分析し、生活も含めて社員を安心させるための将来像を本気で立案し、現実との乖離をそのあとの行動で埋めていったからです。

 生きるか死ぬかの瀬戸際でしたので、顧客と社員のこと以外はある意味で捨てた戦略でした。

 その後の中期の戦略も会社の成長・発展に貢献する道標になったことは事実ですが、「何となく、恰好をつけている」部分が多くなってきているのが自分では分かります。銀行や投資家の外部の目などいろいろなことを気にしてドレスアップしだしたからかも知れません。

 皆さんは、こうならないようにご留意ください。

3.現実的な綺麗な姿を描く

 戦略の見栄えを気にしすぎて、数年後の会社の絵姿をあまりに理想形にしすぎると、どこかの本からの切り抜きではないかと思われるようなものになりかねません。私の経験では現場の知恵から乖離した博識な社員のみに戦略を策定させると、よくあることです。

 戦略目標として目指すものがあまりに非現実的な目標になっていても、絵姿は人目を魅きます。本の知識を基にした思い込みが前に出て、自分の会社の諸事情を見ずに、綺麗な絵姿のみを描いているものです。イメージ先行で、現状との乖離も、描けば何とかなるだろうという安易すぎる考え方からきている場合です。

 イメージだけでは決してうまく展開できません。

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