園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム 園山征夫のビジネスコラム

現地現場

生活者の声、顧客の声を鋭敏に汲める組織や体制になっていますか?プロの働き方をしていますか?

Posted on 2012-08-02

情報共有の時代の統治方法

いろいろな情報機器という武器を使って地球上どこの地域の情報でもどんどん公開される時代になってきました。世界が確実にグローバル化に向かっています。

この様な時代には、興味がある人々が自由な発想で世界中の知恵を結集して何か新しいことにチャレンジできる環境をつくることこそ社会全体の繁栄に繋がる、との考えを私は持っています。

このような人々が個人の個別の要望・願望に合わせ自由な発想で何かを造っていくエネルギーに期待する環境をつくる施策を打ちだすことこそが社会全体にとって肝要なことだと思います。

逆に、今の政治の世界で全体を「十把一絡げ」にした方法や行政施策がはびこっているとすれば、その効果には大きな疑問を覚えます。

例えば国民全体を対象にしたマクロの産業政策や、中央官庁主導の縦割りの政策等で有効需要を喚起したりする考えは、中期的な視点に立てばまず上手く行かないのではないかと思います。

新しい情報機器や端末で沢山の個別情報を既に手に入れている生活者や顧客という需要側自体が、既存の政治統治組織や体制にパラダイムのシフトを求めているからです。このことを政治の仕事をしている人々に本気で肌で感じ、分かってもらわねばなりません。

この意味では、大阪をはじめとする地方自治体が適正な財源をもとに自分たちの好きなように行政をやらせてくれと要望するのも、個別の意図は別にして、当然の流れと見ます。

現地現場での課題解決力

私自身、政治とは別の経営の世界でこの流れに気づいていました。会社の経営で、本社より現地現場に裁量権をうんと持たせ、自由闊達に運営させる必要性をいち早く感じていたのです。

顧客が困っていることの問題を明確にし、その解決方法を提案するといういわゆるソリューション型(課題解決型)のマーケットの要請をひしひしと感じていました。

企業としてこれに応え速やかに課題を解決するためには、組織形態もピラミッド型組織からフラット型の組織に変えて、そこに権限を与える方が効果があると考え、「小グループ」の長にプレイングマネジャー的責任をもってもらうことにしました。自分でリスクを管理し、多様な人間関係を開放型に持ち、すぐ対応してもらえるプロの人材集団の育成を望んでいたからです。

そのために「小グループ」制をとり、社員のイノベーティブマインドを鼓舞して社員と会社全体の活性化は実現できました。現場個別の事情を配慮せず、強力な本社が会社全体のマクロ施策を組織の縦割的に現場に打ち出す弊害を、私は時代遅れと見ていました。

私には、本来、汗を流している現場の人々が一番マーケットの流れを知っているとの思いがあり、そのために必要な組織制度をつくり、現場のプロの人材に任せるべきであるとの考えが強かったからです。

「はやぶさ」のエンジン設計者のプロ魂こそ見本

2012年春、飛行機内でたまたま映画、「はやぶさ」を観ていたことを思い出します。

2003年5月に打ち上げられた「はやぶさ」が2005年夏に地球から60億キロ以上離れた小惑星「イトカワ」に到着しました。この探査機が空気の噴射でアート的に実施する姿勢制御機能を失うという事態に見舞われるのですが、宇宙開発機構(相模原センター)から1.5か月間に数万回電波を送り続けていたところ、ある技術者の設計変更のおかげで衛星が微弱電波に反応を示し、偶然、制御が可能となったのです。

設計仕様段階ではこうなっていなかったようですが、設計技術者が自己判断で工場に設計仕様を依頼していたおかげで、補助イオンエンジンとの迂回ルートを利用してエンジンを作動させることができたのです。エンジンが再起動でき7年ぶりの2010年6月にオーストラリアの砂漠に落下、カプセルを回収できました。

まさに、何かの時のリスクを想定し、その課題を解決する策を自分で打つというプレイングマネジャー的現場のプロの技術者の働き方です。

 

社員の「やる気」を引き出す経営をしていますか?

Posted on 2012-06-28

 社員の「やる気」を引き出すにはいろいろな方法があると思いますが、私はそんなに難しいことだとは思いません。何かの改革を実践するには社員の一糸乱れぬ行動が不可欠ですが、それには、経営者やリーダー自身がしなければいけない「定石」があると考えます。

 第一に、何をどう改革しなければならないかの現状把握が必要です

  現状把握をする時、「現地現場」からの報告をもとに事実を把握すること以上に、自らが現場に出向いて、疑問を持って事実を見ることが肝要です。これが意外に難しい。現場からはいろいろな意見が出ますが、その中から本質的な所を抽出する力が不可欠です。それをもとに、自らの言葉で、具体的に分かりやすく将来像を示すことです。

 私は、「6つの約束」として社員に明示しました。この2番目に「ダントツ一番になる」ことを明記しました。誰にも響く言葉です。上場を果たしだいぶ経ってから、それ以降の中期計画を策定した時、中途で入社した知恵の働くある人物の「この言葉はダサイです」からという意見で、削除することになったのが残念です。

 また、ダントツ一番になった時、社員はどうなるかも鮮明に示しました。皆、そうなった時の自分の姿を知りたいのです。それに引き換え、思い出すのは福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の際の技術者の説明です。ベクレル、マイクロシーベルトといった我々には耳慣れない放射能化学の単位でいろいろな発信をしていましたが、「国民がどれだけ危険か」についての具体的な説明が全くなされないので、その発言は少しも響きませんでした。

第二に、戦略展開は会社と社員の「強み」をどう活かすかを重点にすべきです

 現地現場の事実を把握すると、沢山の「弱み」に気づきます。しかし、この「弱み」のみに焦点をあててしまいますと、社員のモラールはダウンし、リーダーも単なる評論家になり下がってしまいます。

第三に、将来像と戦略展開を飽くことなく説くことです

 将来像と戦略展開を何度となく、しかも、全体にストーリー性を持たせ、自分の心の底から説くことです。飾り気なくとも良いのです。リーダーは自分で策定の骨子をつくっていますので、借り物ではありません。だから説けるのです。誠実に「対話」することです。

 現地現場に出向いて、その現場で発生していることを題材にして抽象的でなく具体的に、将来像が実現した暁にはどう変化するかを説くのです。飽くことなく説くことです。正しいか、正確かではなく、自分の考えが相手に伝わるか否かがポイントです。本気でないと伝わりません。本質的なところは変えず、少しずつ新しいことを付け加えて。

 「同じことを言っている」と言われても構わないのです、経営をしていく中では、そんなに新しいことなどあり得ません。また経営にとって大事なポイントは、そんなにたくさんはありません。少しずつ角度を変えて言うことになりますから、「少し新しい内容が入ったな」程度に思われることで結構です。

第四に、いつまでに何をするかの時限を明示することです

 一大目標なら4~5年、簡単な目標なら1~2年です。その間に率先垂範した行動を起こし実現しなければなりません。この時、数字のみで語らないことです。フォーマットには数字部分と数字の背景がワンセットになっているはずです。月次のポイントは違うはずです。「当月は何を重点に置いてマネジメントしたか」一点豪華主義で推進することです、あれもこれもはまず上手くいきません。