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定石

第246回 戦略というストーリー(物語)を描く

Posted on 2017-04-27

 連絡事項です。この原稿は24日に仕上げ、一昨日より海外に遊びに行っており、このビジネスコラムを6月の初め頃まで原則休稿とさせていただきます。

 

 昨年末に『勝ち続ける会社の「事業計画」のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)を著した関係上戦略策定についての相談が多いので、皆様にもお役に立つと思い、以前取り上げたこのテーマを再度取り上げます。

 2012年に書いた『これからの社長の仕事』(ネットスクール出版)の中で「農耕型企業風土」づくりの「18の定石」の重要性についてふれました。定石を踏むことで、目指す企業風土をつくる、これを実現する過程を通じて企業の成長を早期に実現を目指すものです。

 私自身経営や戦略策定の仕事などで多少の成果をあげた実績をもとに、「仕事にストーリー(物語)性をもたせ、常にイノベーション・マインドをつくる」ことを13番目の定石としました。経営や戦略という仕事を成功裏に導くために、それらをストーリー(物語)、しかもイノベーティブなストーリー(物語)として描くことが不可欠だからです。

 「定石13」を強調した背景は、現状の延長線上で未来を予測して戦略を練り、結果として失敗したり、革新が無いだらだら経営が続いている経営者を沢山見てきたからです。また、戦略も含め魅力的なストーリー(物語)に仕立て上げないと、社員の共感を得られず、スピードが出ない経営も沢山見てきたことも背景にあります。

 未来を同一線上に予測するのでなく変化や革新を自ら洞察し、洞察したことを現状の分析を踏まえてまずキチッと物語として描き、それにマッチした戦略を策定・展開するのが成功のカギではないかと思っています。想像し洞察したことの重点内容を経営戦略として明快にストーリー(物語)として描き、戦術として計画的に遂行することが成功の近道だと感じています。

 ここでストーリー(物語)にするまでの考え方を整理してみます。私の場合、次のようなステップを踏んでいます。これを、通常、無意識にやっている経営者もいます。しかし、再度、ステップを意識して確認してみることで経営のレベルが高まります。意識して行うことをお薦めします。

 

1.経営目標を設定する

 社長のヴィジョンを全社の目標の中に整備して織り込みます。

 社長がいろいろな場面でヴィジョンを語っているはずです。しかし、その発言の文言が統一的でなく、微妙なニュアンスの違いなども含んでいるはずです。そこで一度「やりたいこと、挑戦してみたいこと」を整備してみる。

 整備した後で、自分も納得でき、社員も共感できる形にデザインした「経営目標」を設定します。

この場合、出来れば「経営目標」の中に数字や期限を織り込みたい。単純明快な言葉にまとめたい。この目標の内容に接する人に誤解を生む余地が少なく正確に理解し、自分事として捉え浸透をしやすくするためです。

 

2.課題群をつまびらかにし、重点的に取り組むテーマを設定する

 もちろん、業種や、事業の発展段階で課題の内容には違いがあります。

 顧客が偏りすぎている、エンドの顧客が見えていない、世の中の新メディアや技術に対応しきれていない、人材の育成ができていない、新しい収益モデルが見つからないなど、いろいろな課題が次から次へと見つかるかもしれません。

 私が経営責任を負った頃の或る会社も、難問山済みでありながら課題群がつまびらかにされておらず、課題間の関係も整理しきれていない状態でした。

 

余りにも沢山課題がありすぎて、課題群をパッチワークで個別に対応するより、それらの重要なものを包摂して同時並行的に解決できるものが多いことを発見しました。そこで私の場合、課題群の関係性を整理の上重点的に取り組むべきテーマとして課題群より更に上位のものを設定しました。

 今流に言えば、新しい収益モデルを見つけ、それをテーマに設定したのです。既存のモデルを継続していったのでは課題群の解決に時間がかかりすぎ、社員を含めた全員の努力の成果が予期したほどには期待できないと読んだからです。

 

3.事業展開に必要な事実情報を収集する

環境の変化の洞察

 一つは、環境の変化に関わる情報、二つは、自社の実態に関わる情報を収集分析することです。

 新しい技術が世の中の顧客の行動や一日の利用可能時間の中での利用内容を変えつつあります。

 特に、ビジネスマンの使える時間の中でスマホに費やす時間が相対的に増えています。すなわち、情報入手が簡便になった反面、スマホでの連絡で済ませ、対人の関係の物理的関係の希薄化が発生してきています。対人をベースとする商談の時間も相対的に減ってきていますので、商談のスタイルの変更を迫られています。

 過去、高齢者から若者が得ていたノウハウ的な情報も、ネットで簡単に収集でき、高齢者が尊重される場面が相対的に少なくなってきたという間接的影響も出てきました。

 スマホの利用で、一日の中で他の遊び、勉強、読書などに充てる期間が少なくなってきました。自社の商品やサービスに費やされる時間が絶対的に少なくなってきていることを意味します。これらのことは自社のビジネスの将来に甚大な影響を及ぼす環境変化です。

 片や、この反動で、古いこと、田舎の環境へのあこがれ、失せたことへの郷愁もビジネスマンの心の中で一定割合を占めてきています。これをビジネスの視点を変えるチャンスが来たと捉えるむきもあります。

 自ら関係している事業を取り巻く環境の中で、世の中で発生している政治、経済、社会など環境の変化が自社のビジネスに積極的影響や消極的影響を及ぼすことになります。このトレンドを推察することが不可欠です。

実態分析

 自社の事業の実態の分析をつまびらかにしなければなりません。

 これにはいろいろな手法がありますが、一般的にはSWOT分析やこれを修正した手法が有効に使われています。自社の相対的な強み(Strength)、弱み(Weakness)、ビジネス機会(Opportunity)、いろいろな脅威(Threat)の事実を明示的に把握するプロセスです。

 分析にあたり注意すべきことがあります。

 同じ事実がメンバーによって強みと見えたり、弱みと見えたりします。創業したころのメンバーは、強みと観る。しかし、他の企業での経験を経て入社した人は、同じ事象を弱みと観るかもしれません。

 それをすべて同じテーブル上に開示して議論することが重要です。くれぐれも職位の上下の人の強権で一義的に判断しないことです。この分析内容が以後の戦略策定の思考プロセスに大きな影響を及ぼすからです。

 

4.事業の先行きを支配しそうなドライビングフォース(原動力)を見つける

 環境分析、自社の実態分析を通じて今後も強みとして維持・強化していける因子をなんとか見つけるプロセスです。

 今はそんなに強くないが、それを今後も強化していくことで、競合他社との競争に勝てる因子を見つける、すなわち、ドライビングフォース(原動力)を見つけるのが次のステップとなります。会社の成長・発展を引っ張る力となるものです。

 ドライビングフォース候補は一つしかない見つからない場合、大小、強弱合わせて複数見つけることができる場合等いろいろあります。しかし、欲張って作戦が散漫にならないように、挙がったドライビングフォース群の中から最重要な少数のものに限定するほうが得策です。資源を集中的に有効に使えるからです。

 

5.方向性を決める

 ドライビングフォースをどのマーケットに適用していくか、フィールドの狙い目を定めます。

 マーケットの将来の成長性が高く自社の因子が上手く適用できるフィールドを探した方がよいです。華々しく見えるフィールドには沢山の潜在的競合がいるはずですので、最初の段階では実力相応のフィールドを選びます。

 それでも時には、そのドライビングフォースを使って全く新しいマーケットを造る挑戦もしたい、そこで大きなシェアをとりたい。その方向性も勿論選択できますが、勝負に本当に勝てるかの綿密なリスク分析が不可欠です。

6.成功するストーリー(物語)を戦略として描く

 ドライビングフォースを駆使して決定した方向性のフィールド上で、どうやって稼ぐかの戦略の段階に入ります。この戦略の良し悪しこそ会社の将来の成長を決定づける重要なステップです。しかも、中期的視点でストーリーを描く気持ちを持ちたいものです。

 物語に起承転結がある通り、会社の成長にも力を貯める時、その力を一気に事業拡大につなげる時などのメリハリのある物語が現実てきです。一直線で成長する物語ももちろんありです。しかし、競争激化するマーケットの中でそのような絵図を描くには相当の自信と潜在的力があることが前提です。これも分相応の作戦からの絵図を描かれることをお勧めします。

 物語全体をいわゆる戦略と称するもので、私の場合、これを「中期計画」と称していました。総論倒れにならないよう絞り込みの留意、選択した戦略のリスク分析、投資対効果を最大化できる選択にするために計数以外の項目をどう評価するか、戦略が策定された後、各年度の事業計画の中での戦術展開時、具体的なイメージが全社員に湧き、自分がその実行の主役なのだと思えるストーリー化を目指すこと、上記の1~6がストーリー(物語)全体として矛盾なく遂行できるものかなどなど、書くべきことが沢山ありますので、この詳細は別途の項に述べることにし、当方海外に視察と称した遊びに行ってきます。

 

 

企業風土こそ重要との海外での主張(2)

Posted on 2013-09-12

前号の続きです。

 

何をどうすれば良いか?

内容に賛同されたら、そのような企業風土をどう作れば良いのかとの疑問がわくのが当然です。私の場合は全体を体系化して、それを人間で言えば骨格の部分と内臓に相当する部分に分けて、「農耕型企業風土づくり」の方法とステップを明示しました。現場を巻き込みこれを一体として取り組まなければなりませんが、ここで『一緒に仕事をしてよかった』からの内容を紹介します。

 

社員が支持する強い企業文化

この本の中で、社員が支持する強い企業文化を気づくには、以下の7点が必要であると記載されています。

1.危機を定義する。

  リーダーはミッションを明確に定義し、そこに危機感を吹き込まなければならないとしています。

これは私の体験から実に重要な点だと思っています。特に私が任された会社は実質倒産状態でしたから、一生懸命会社の将来の方向性を考え、皆にミッションを与え、そのミッションを皆で達成しなければ会社の存在自体が確実に危うくなる危機を定義し、説明していましたが、彼らの主張とピッタリです。

 

2.顧客に焦点をあわせる。

  社員がその時点で正しい決断をし、自主的に動くには顧客に焦点をあわせることとしています。

この点も私の経営体験と全体体系図どおりです。会社の施策や組織を顧客に焦点を与えたものに徹底し、現場に権限を持たせて現場の社員が自主性を持って動ける環境が大切です。

 

3.俊敏になる。

  変化への対応力が高いこと、将来を見据えてマネジャーは動くことと主張しています。

私の場合、最初はなかったのですが、経営していた途中で気づいたことがありました。「あなたの会社の企業風土は?」と採用などのときに聞かれることが多かったのです。そこで、社員が皆同様な内容を答えるようにと、それまでいろいろな方針説明で説いていたことを整理しました。企業風土としては「SOSFCCQ」と整理しました。このうちのSは俊敏性のSpeedで、もう一つがSimpleでした。ものごと、100%はわからないが、動くべき時に動くという企業風土を目指してこれを構築していきました。

 

4.すべてを共有する。

  厳しい事実でも社員に伝え、議論することで信頼関係が育ち、開かれた企業文化が築かれますと説明されています。

私は、「価値の共有」という表現をしています。情報は基本的に全て開示し、判断にいたるプロセスも開示する方針を貫いていました。秘密主義から良い企業風土は生まれないとの確たる信念があったからです。

 

5.部下の才能を見出す。

  マネージャーは社員を真のパートナーとして扱い彼らに成長の機会を与える。

社員をどう育成するかです。場を与え機会を与え経験をさせる。そのための方向性のガイドラインを与え、その範囲内で自由闊達にマネジメントする機会をマネジャーに与えることで、社員の隠された才能も開花し、早く育つのを見てきました。

 

6.互いに応援し合う。

  同僚同士がお礼を言い合うことで団結心と正しい行動を実践する一途さが育まれるとしています。

私は、いい仕事をするには、より良い人間関係が決め手だと思っています。これに気づくには、チームの中で自分の主張をしながらも全体最適に自分がどう振る舞うべきかを自ずと学ぶことです。「対話」の重要性も強調しています。

 

7.責任を明確化する。

  社員が目標を達成するには、責任と手段、成功した時の見返りを与えるとしています。

何をしたらどうなるかについて、出たとこ勝負でなくあらかじめ約束事として皆に明示することにしていました。特に皆で稼いだ利益の分配については、ある段階からあらかじめ分配ルールを決め、社員がメリットを享受するようにしていました。

 

上記の7点に加えて、社員が喜んで全力を果たす組織を作る方法として、社員の思考を刺激する質問をすることとの記述もありますが、これも私が全体構造の内臓に相当する部分で「適切な質問をする」ことの重要性に触れ、自ら考える風土作りを目指すと主張していることに通じます。

 

企業風土を造るには相当な努力が必要です。しかも、経営層は当然として、全社員を巻き込み、たゆまぬ努力をすることが必要です。それでもある段階で所定の企業風土らしきものができてからの経営は、非常に楽しいものです。社員の幸せのために行う施策が、結果として顧客、株主、金融機関の利益にも通じるものになるのです。皆が得をする「三方一両得」の経営になるのです。

これまで『一緒に仕事をしてよかった』の本を引用しながら、良い企業風土づくりに必要なポイントやその造り方の要点を述べてきました。 ここで忘れてはならないことがあります。信頼ということです。組織の中のあらゆるところで信頼関係は不可欠です。口だけでなく本心からの信頼関係が樹立できれば、企業風土は確固たるものになります。

私の著書、『これからの課長の仕事』でも述べましたが、私も経営者として社員との信頼関係が「できた」と思った瞬間を明確に記憶しています。一生懸命経営をして社員の幸福のために努力をしていたら、社員がそれを認めてくれた瞬間です。基礎ができたので、それ以後の経営は上モノをどんどん建てても決して崩れない磐石なものになりました。

「園山征夫のビジネスコラム」の中でも、信頼関係の重要性についてくどいくらい触れています。これさえあれば、大抵のことは成就できると思うからです。『一緒に仕事をしてよかった』の本の著者が一番主張したかったことは、信頼関係ではなかったかと思うので、今回はそれを紹介します。

著者は、第1章の冒頭にある事例をあげています。

1959年6月30日、2万5000人の観客が見守る中、フランス人の軽業師「偉大なブロンヂン」(ジャン・フランソワ・グラフレ氏)が、ナイアガラ瀑布に張った直径8センチのロープの綱渡りに成功した記憶に残る一日のことを記述しています。

何回も成功するうちに、軽業師が「手押し車を押して綱渡りをしたいのですが、どなたか乗りませんか?」と、半ば冗談で質問したところ、場が静まりかえりました。命知らずの綱渡り、しかも、ナイアガラ瀑布、さらに、手押し車に乗せられては成功の確率は疑問なることは誰にもわかります。従って、静寂。その時、軽業師のエージェントの男が名乗りをあげたとの内容が記載されています。口先だけでなく、本心から信頼を寄せてくれる人がいたのです。軽業師は深い感銘を受けたと書かれています。

本当の信頼とはどういうものかを非常に端的に表現しています。しょっちゅう違うことを発言しているようでは信頼の序の口以前です。1000回の浮ついた言葉より、たった一言で人間の心が動かされる瞬間を見る感じがします。

 

企業風土こそ重要との海外での主張(1)

Posted on 2013-09-05

 ここ数カ月あまり生産的でない事件のために浮かない日々が続いていました。ところがある日、中央林間のある本屋さんで私にとって決定的な本に出会いました。それ以来毎日「わくわく元気」な日々を送っています。是非、この事実と本の内容を「園山征夫のビジネスコラム」の読者の方々にお伝えしようとはしゃいでいる次第です。

 

ある出会い

 『一緒に仕事をしてよかった』という奇妙なタイトルの本を見つけました。2013年8月のある日です。

 日本経済新聞社から2013年5月に発刊(匝瑳玲子氏が翻訳)されたもので、Adrian GostickとChester Eltonの共著です。彼らはカルチャー・ワークスの創業者であると巻末の著者紹介に記載されている如く、職場環境をテーマにした本を多数出している方々だそうです。私がはしゃいでいる理由は簡単です。その本が『これからの課長の仕事』(2011年9月)『これからの社長の仕事』(2012年1月)(両著はネットスクール出版)の中で私が主張している経営手法と実質同じことを述べているからです。

  多少の違いはあっても、経営の、人の心の琴線に触れる部分が如何に重要であるかについては本質的な違いがないことを、この本からも確信しました。あわせてこの本の内容が期せずして、『「農耕型企業風土づくり」を通じて企業を中・長期的に発展させる経営手法こそが今求められている』こという私の主張を、海のむこうから側面サポートをしてくれる資料的役割を果たしてくれていることに感謝します。

 実に嬉しいことす。海外で主張されていることを鼻高々で日本に導入する学者もいますが、私としては、私が日本での経営について全く独立に主張していたことと同じ主張をする人が、期せずして海外にもいたことが素直に嬉しいのです。しかも相当のデータも補助資料として開示されています。私の主張全体を理論的背景としながら、個別のフェーズに関して各種コンサルティングやコーチングなどで活用するバックボーンにするための有益な援軍となる本だと勝手に位置づけしています。

 

好業績をあげる企業文化のポイント

 ここで『一緒に仕事をしてよかった』で記載されているポイントを皆さんとシェアしましょう。この本のポイントは、好業績をあげるカギは、リーダーやマネジャーの努力以外に何かあるはずだ。それは企業文化にあるというものです。

 彼らは企業文化と翻訳しています。私の言う企業風土は多少東洋的ですがほぼ同じと考えて結構です。これこそ企業が競争優位に立つための「最大の差別化」になるという私の主張と同じことを述べていると思います。

 引用しますと、「ゴールドマン・サックスのジョン・F・ロジャーズ主席顧問は、企業文化のきわめて重要な役割についてこう述べている。『わが社の社員は競合他社の社員と同じ飛行機に乗って移動します。宿も同じですし、クライアントも重なっている場合が多い。だとすれば、仕事ぶりと企業文化を連動させて競合他社と差別化を図るしかない。だからこそ、わが社独自の企業文化が必要なのです。企業文化こそが、私たちを結びつけるものなのですから』。私たちは彼の言葉に感動した――企業文化こそが他社と差別化し、私たちを結びつけるものなのだ。」

 好業績をあげる企業文化には以下の3つの要素が揃っていると、かれらはその著書で主張しています。

 まず、第一に「愛着心」です。愛着心を持った社員は自発的に努力をする意思を持っており彼らは組織のミッションと価値観を重視すると。

 第二に、「活躍の支援」と表現するものです。社員が活躍するには、障害を乗り越える上で必要な情報、適切な備品や設備を与える必要があると。

 第三に、「活気づけ」です。会社から活気づけられることで、社員は自分が高く評価されていると感じ、やる気になるというものです。

 

私の主張との類似

 言葉は少し違いますが、『一緒に仕事をしてよかった』の中での主張の内容は、「農耕型企業風土づくり」で企業を中・長期的に成長発展させる「フォーミュラ」や「定石」などで私が主張していることとほぼ同じです。

 第一の「愛着心」ですが、私は愛着心を持つために、喜びも苦しみも分かち合う「湿り気のある人間関係」をつくる(定石 7)ことを強調しました。「湿り気のある関係」が米国人にどう理解されるかを彼らと一度議論してみようと個人的にワクワクしています。

 第二の「活躍の支援」です。私は「『場』をあたえる」(定石18)ことを重視しています。社員が活躍できるようにシステム化すること生産性アップを援護するのは当然として、彼らが持てる才能をふんだんに発揮出来る「場」を用意することがポントと見ました。私の本の中にいろいろな事例を記載しています。

 第三の、「活気づけ」ですが、これをいろいろな形で実現しようと私は主張しています。経営理念の浸透を惜しまず(定石6)、経営者と社員、社員間の信頼関係をつくり(定石3)ながら、いろいろな仕掛けを使って社員をわくわく元気にするものです。

 結論から言えば、「社員が幸せになる」ように各種施策を実行することで、経営理念への本心からの賛同や、良き人間関係を通じて社員の愛着心につながり、彼らが会社内で自己実現を出来るような支援を施し、各種「仕掛け」を通じて社員を活気づけてモラールアップさせる方式です。表現の違いはあるにせよ実質同じ内容です。信頼関係を基礎としたオープンな企業風土を造ることです。

 

 データでの証明

 『一緒に仕事をしてよかった』の本の中に面白い情報が開示されています。私はこの本を読むまでその調査がなされたことを知りませんでした。

 アメリカ国内とは言え、経験値のみでなくこのようなデータがあることに、実は武者震いしました。日本国内でこのようなデータを集めようと考えていた矢先だったからです。実証実験をして、いろいろなワークショップでの議論に役立てたいと考えていたからです。

 その調査とは、タワーズワトソンによる大規模調査です。「好業績企業の内部は如何に機能しているか」に関わるワークフォーススタディーの調査です。私自身まだ調査の実際の内容を見ていませんが、是非、内容を吟味してみたいと考えています。

 調査は2009年から2010年の2年間かけて700社、約800万人分のデータを集積し、好業績を誇る25社(社員約30万3000人)を抽出したと記載されています。「その25社の財務成績は競合他社より2~3倍の差をつけており、世界でひとにぎりしか存在しない高業績企業の中でもトップレベルである」とも記載されています。

 この調査から「以下のような大きな発見があった」とこれまでの主張を調査分析で裏付けています。要約しますと、

1.企業文化が、会社へのコミットメントとさらなる努力をさせる高いレベルの社員の愛着心を創出していた。

 2.企業文化が、生産性と職務遂行をサポートする環境を整え、社員が活躍を支援されていると思えるようにしていた。

 3.企業文化が、社員が仕事を通じて幸福感とやる気を感じられるように活気づけていた。

 上記の内容は私の経営経験ではごく当然なことですが、これが信頼性のあるデータで裏付けられていたことに本当に身震いがしました。

 今後、日本でもこれに関連するデータを集積の上、本質的なものを抽出していく予定です。ぜひ、皆様のお力をお借りしたいとお願いします。

 

 

園山征夫のビジネスコラム「折々の言葉」の開始にあたって

Posted on 2012-04-25

クリスタル置物 私は過去に、「孤高の男」と言われたことがありました。経営者として会社を成長させるにあたり、既存の組織体制、枠組み、考え方や、特定の声に媚を売ることなく正論を前向きに直言してきたからだと思います。

そのようなスタイルで経営し、結果として会社を大きく成長・発展させることができました。また、沢山の人材を育成することができ、彼らは今、それぞれのビジネス分野で大いに活躍してくれています。

コラムのスタートにあたり、最初にご紹介するこのクリスタルのアート作品は、以前私が経営責任を負っていた会社を最短で東証2部(後に1部)に上場したとき、その記念としてお世話になったCSKの創業者、故大川功会長に贈呈したものと同じもので、私の自宅に保存しているものです。裏側に「山超えて、次なる峰へ再び挑戦」と彫ってあり、これを目にするたびにその心境で社員と会社の成長・発展に挑戦していたことを思い起こします。

ビジネスコラム開始のきっかけ

私には、ビジネスマンと出会うチャンスが数多くあります。中には、経営やマネジメントに悩める優秀なビジネスマンや、起業を目指して一生懸命頑張っているのに、経営の「定石」を見落としていると見受けられる方が数多くいます。また、新しいことに挑戦し、次の時代を切り拓こうと日々悪戦苦闘している経営者層や社員にお会いすることもあります。

このような方々とお会いする機会が増えるにしたがって、「少しでも支援したい、皆さんにもっと『わくわく元気』になっていただく方法はないだろうか」という気持ちが生まれました。

ちょうどその頃です、偶然出会ったネットスクール株式会社の桑原社長、岩田専務、遠藤常務と対話する中で、私の考えに共感いただき、二冊の本を出版させていただきました。同時に「わくわく元気会」という「場」を提供することで、皆さんが「わくわく元気」になるよう少しは応援できていると感じています。

書籍の出版や「場」の提供に加え、皆さんが「わくわく元気」になれるよう支援するためにスタートするのが「園山征夫のビジネスコラム、『折々の言葉』」です。このコラムを通じてマネジメントや経営のヒントを皆さんにお伝えしていきたいと考えています。

折々の言葉

コラムで紹介する内容や考え方のコンセプトは、私の著書『これからの社長の仕事』や『これからの課長の仕事』(ネットスクール出版)に書いたことをベースとしています。すなわち、社員を物心両面で幸せにして、同時に会社も中・長期的に成長する「フォーミュラ(公式)」や「農耕型企業風土」づくりの「定石」を基軸に、単にコンサルティング的な視点ではなく、私の20年間の経営体験を踏まえ、その間に実際に発生した事象やその時に関係した人物をリアルに想定したテーマをもとにして展開していきます。

コラムの主要テーマは、経営やマネジメントについてですが、時には私の好きな樹木、草花、石、造形物などを添えながら「遊び」を持たせ、私自身「春夏秋冬 日々是新」の余裕を持った姿勢で、「わくわく元気」な気持ちで書き進めていきたいと思います。