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「農耕型企業風土」づくり / 折々の言葉

企業風土こそ重要との海外での主張(1)

Posted on 2013-09-05

 ここ数カ月あまり生産的でない事件のために浮かない日々が続いていました。ところがある日、中央林間のある本屋さんで私にとって決定的な本に出会いました。それ以来毎日「わくわく元気」な日々を送っています。是非、この事実と本の内容を「園山征夫のビジネスコラム」の読者の方々にお伝えしようとはしゃいでいる次第です。

 

ある出会い

 『一緒に仕事をしてよかった』という奇妙なタイトルの本を見つけました。2013年8月のある日です。

 日本経済新聞社から2013年5月に発刊(匝瑳玲子氏が翻訳)されたもので、Adrian GostickとChester Eltonの共著です。彼らはカルチャー・ワークスの創業者であると巻末の著者紹介に記載されている如く、職場環境をテーマにした本を多数出している方々だそうです。私がはしゃいでいる理由は簡単です。その本が『これからの課長の仕事』(2011年9月)『これからの社長の仕事』(2012年1月)(両著はネットスクール出版)の中で私が主張している経営手法と実質同じことを述べているからです。

  多少の違いはあっても、経営の、人の心の琴線に触れる部分が如何に重要であるかについては本質的な違いがないことを、この本からも確信しました。あわせてこの本の内容が期せずして、『「農耕型企業風土づくり」を通じて企業を中・長期的に発展させる経営手法こそが今求められている』こという私の主張を、海のむこうから側面サポートをしてくれる資料的役割を果たしてくれていることに感謝します。

 実に嬉しいことす。海外で主張されていることを鼻高々で日本に導入する学者もいますが、私としては、私が日本での経営について全く独立に主張していたことと同じ主張をする人が、期せずして海外にもいたことが素直に嬉しいのです。しかも相当のデータも補助資料として開示されています。私の主張全体を理論的背景としながら、個別のフェーズに関して各種コンサルティングやコーチングなどで活用するバックボーンにするための有益な援軍となる本だと勝手に位置づけしています。

 

好業績をあげる企業文化のポイント

 ここで『一緒に仕事をしてよかった』で記載されているポイントを皆さんとシェアしましょう。この本のポイントは、好業績をあげるカギは、リーダーやマネジャーの努力以外に何かあるはずだ。それは企業文化にあるというものです。

 彼らは企業文化と翻訳しています。私の言う企業風土は多少東洋的ですがほぼ同じと考えて結構です。これこそ企業が競争優位に立つための「最大の差別化」になるという私の主張と同じことを述べていると思います。

 引用しますと、「ゴールドマン・サックスのジョン・F・ロジャーズ主席顧問は、企業文化のきわめて重要な役割についてこう述べている。『わが社の社員は競合他社の社員と同じ飛行機に乗って移動します。宿も同じですし、クライアントも重なっている場合が多い。だとすれば、仕事ぶりと企業文化を連動させて競合他社と差別化を図るしかない。だからこそ、わが社独自の企業文化が必要なのです。企業文化こそが、私たちを結びつけるものなのですから』。私たちは彼の言葉に感動した――企業文化こそが他社と差別化し、私たちを結びつけるものなのだ。」

 好業績をあげる企業文化には以下の3つの要素が揃っていると、かれらはその著書で主張しています。

 まず、第一に「愛着心」です。愛着心を持った社員は自発的に努力をする意思を持っており彼らは組織のミッションと価値観を重視すると。

 第二に、「活躍の支援」と表現するものです。社員が活躍するには、障害を乗り越える上で必要な情報、適切な備品や設備を与える必要があると。

 第三に、「活気づけ」です。会社から活気づけられることで、社員は自分が高く評価されていると感じ、やる気になるというものです。

 

私の主張との類似

 言葉は少し違いますが、『一緒に仕事をしてよかった』の中での主張の内容は、「農耕型企業風土づくり」で企業を中・長期的に成長発展させる「フォーミュラ」や「定石」などで私が主張していることとほぼ同じです。

 第一の「愛着心」ですが、私は愛着心を持つために、喜びも苦しみも分かち合う「湿り気のある人間関係」をつくる(定石 7)ことを強調しました。「湿り気のある関係」が米国人にどう理解されるかを彼らと一度議論してみようと個人的にワクワクしています。

 第二の「活躍の支援」です。私は「『場』をあたえる」(定石18)ことを重視しています。社員が活躍できるようにシステム化すること生産性アップを援護するのは当然として、彼らが持てる才能をふんだんに発揮出来る「場」を用意することがポントと見ました。私の本の中にいろいろな事例を記載しています。

 第三の、「活気づけ」ですが、これをいろいろな形で実現しようと私は主張しています。経営理念の浸透を惜しまず(定石6)、経営者と社員、社員間の信頼関係をつくり(定石3)ながら、いろいろな仕掛けを使って社員をわくわく元気にするものです。

 結論から言えば、「社員が幸せになる」ように各種施策を実行することで、経営理念への本心からの賛同や、良き人間関係を通じて社員の愛着心につながり、彼らが会社内で自己実現を出来るような支援を施し、各種「仕掛け」を通じて社員を活気づけてモラールアップさせる方式です。表現の違いはあるにせよ実質同じ内容です。信頼関係を基礎としたオープンな企業風土を造ることです。

 

 データでの証明

 『一緒に仕事をしてよかった』の本の中に面白い情報が開示されています。私はこの本を読むまでその調査がなされたことを知りませんでした。

 アメリカ国内とは言え、経験値のみでなくこのようなデータがあることに、実は武者震いしました。日本国内でこのようなデータを集めようと考えていた矢先だったからです。実証実験をして、いろいろなワークショップでの議論に役立てたいと考えていたからです。

 その調査とは、タワーズワトソンによる大規模調査です。「好業績企業の内部は如何に機能しているか」に関わるワークフォーススタディーの調査です。私自身まだ調査の実際の内容を見ていませんが、是非、内容を吟味してみたいと考えています。

 調査は2009年から2010年の2年間かけて700社、約800万人分のデータを集積し、好業績を誇る25社(社員約30万3000人)を抽出したと記載されています。「その25社の財務成績は競合他社より2~3倍の差をつけており、世界でひとにぎりしか存在しない高業績企業の中でもトップレベルである」とも記載されています。

 この調査から「以下のような大きな発見があった」とこれまでの主張を調査分析で裏付けています。要約しますと、

1.企業文化が、会社へのコミットメントとさらなる努力をさせる高いレベルの社員の愛着心を創出していた。

 2.企業文化が、生産性と職務遂行をサポートする環境を整え、社員が活躍を支援されていると思えるようにしていた。

 3.企業文化が、社員が仕事を通じて幸福感とやる気を感じられるように活気づけていた。

 上記の内容は私の経営経験ではごく当然なことですが、これが信頼性のあるデータで裏付けられていたことに本当に身震いがしました。

 今後、日本でもこれに関連するデータを集積の上、本質的なものを抽出していく予定です。ぜひ、皆様のお力をお借りしたいとお願いします。

 

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コメント1件

 小倉久枝(現 小野塚久枝) | 2013.09.07 21:15

ネットを検索していたら、なんと園山社長のホームページに出会いました。懐かしく嬉しく拝読させていただきました。舞台は変わられたようですが、お元気にご活躍ですね。野沢牧子さんの上司の小野塚です。

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