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「農耕型企業風土」づくり / 折々の言葉

企業風土こそ重要との海外での主張(2)

Posted on 2013-09-12

前号の続きです。

 

何をどうすれば良いか?

内容に賛同されたら、そのような企業風土をどう作れば良いのかとの疑問がわくのが当然です。私の場合は全体を体系化して、それを人間で言えば骨格の部分と内臓に相当する部分に分けて、「農耕型企業風土づくり」の方法とステップを明示しました。現場を巻き込みこれを一体として取り組まなければなりませんが、ここで『一緒に仕事をしてよかった』からの内容を紹介します。

 

社員が支持する強い企業文化

この本の中で、社員が支持する強い企業文化を気づくには、以下の7点が必要であると記載されています。

1.危機を定義する。

  リーダーはミッションを明確に定義し、そこに危機感を吹き込まなければならないとしています。

これは私の体験から実に重要な点だと思っています。特に私が任された会社は実質倒産状態でしたから、一生懸命会社の将来の方向性を考え、皆にミッションを与え、そのミッションを皆で達成しなければ会社の存在自体が確実に危うくなる危機を定義し、説明していましたが、彼らの主張とピッタリです。

 

2.顧客に焦点をあわせる。

  社員がその時点で正しい決断をし、自主的に動くには顧客に焦点をあわせることとしています。

この点も私の経営体験と全体体系図どおりです。会社の施策や組織を顧客に焦点を与えたものに徹底し、現場に権限を持たせて現場の社員が自主性を持って動ける環境が大切です。

 

3.俊敏になる。

  変化への対応力が高いこと、将来を見据えてマネジャーは動くことと主張しています。

私の場合、最初はなかったのですが、経営していた途中で気づいたことがありました。「あなたの会社の企業風土は?」と採用などのときに聞かれることが多かったのです。そこで、社員が皆同様な内容を答えるようにと、それまでいろいろな方針説明で説いていたことを整理しました。企業風土としては「SOSFCCQ」と整理しました。このうちのSは俊敏性のSpeedで、もう一つがSimpleでした。ものごと、100%はわからないが、動くべき時に動くという企業風土を目指してこれを構築していきました。

 

4.すべてを共有する。

  厳しい事実でも社員に伝え、議論することで信頼関係が育ち、開かれた企業文化が築かれますと説明されています。

私は、「価値の共有」という表現をしています。情報は基本的に全て開示し、判断にいたるプロセスも開示する方針を貫いていました。秘密主義から良い企業風土は生まれないとの確たる信念があったからです。

 

5.部下の才能を見出す。

  マネージャーは社員を真のパートナーとして扱い彼らに成長の機会を与える。

社員をどう育成するかです。場を与え機会を与え経験をさせる。そのための方向性のガイドラインを与え、その範囲内で自由闊達にマネジメントする機会をマネジャーに与えることで、社員の隠された才能も開花し、早く育つのを見てきました。

 

6.互いに応援し合う。

  同僚同士がお礼を言い合うことで団結心と正しい行動を実践する一途さが育まれるとしています。

私は、いい仕事をするには、より良い人間関係が決め手だと思っています。これに気づくには、チームの中で自分の主張をしながらも全体最適に自分がどう振る舞うべきかを自ずと学ぶことです。「対話」の重要性も強調しています。

 

7.責任を明確化する。

  社員が目標を達成するには、責任と手段、成功した時の見返りを与えるとしています。

何をしたらどうなるかについて、出たとこ勝負でなくあらかじめ約束事として皆に明示することにしていました。特に皆で稼いだ利益の分配については、ある段階からあらかじめ分配ルールを決め、社員がメリットを享受するようにしていました。

 

上記の7点に加えて、社員が喜んで全力を果たす組織を作る方法として、社員の思考を刺激する質問をすることとの記述もありますが、これも私が全体構造の内臓に相当する部分で「適切な質問をする」ことの重要性に触れ、自ら考える風土作りを目指すと主張していることに通じます。

 

企業風土を造るには相当な努力が必要です。しかも、経営層は当然として、全社員を巻き込み、たゆまぬ努力をすることが必要です。それでもある段階で所定の企業風土らしきものができてからの経営は、非常に楽しいものです。社員の幸せのために行う施策が、結果として顧客、株主、金融機関の利益にも通じるものになるのです。皆が得をする「三方一両得」の経営になるのです。

これまで『一緒に仕事をしてよかった』の本を引用しながら、良い企業風土づくりに必要なポイントやその造り方の要点を述べてきました。 ここで忘れてはならないことがあります。信頼ということです。組織の中のあらゆるところで信頼関係は不可欠です。口だけでなく本心からの信頼関係が樹立できれば、企業風土は確固たるものになります。

私の著書、『これからの課長の仕事』でも述べましたが、私も経営者として社員との信頼関係が「できた」と思った瞬間を明確に記憶しています。一生懸命経営をして社員の幸福のために努力をしていたら、社員がそれを認めてくれた瞬間です。基礎ができたので、それ以後の経営は上モノをどんどん建てても決して崩れない磐石なものになりました。

「園山征夫のビジネスコラム」の中でも、信頼関係の重要性についてくどいくらい触れています。これさえあれば、大抵のことは成就できると思うからです。『一緒に仕事をしてよかった』の本の著者が一番主張したかったことは、信頼関係ではなかったかと思うので、今回はそれを紹介します。

著者は、第1章の冒頭にある事例をあげています。

1959年6月30日、2万5000人の観客が見守る中、フランス人の軽業師「偉大なブロンヂン」(ジャン・フランソワ・グラフレ氏)が、ナイアガラ瀑布に張った直径8センチのロープの綱渡りに成功した記憶に残る一日のことを記述しています。

何回も成功するうちに、軽業師が「手押し車を押して綱渡りをしたいのですが、どなたか乗りませんか?」と、半ば冗談で質問したところ、場が静まりかえりました。命知らずの綱渡り、しかも、ナイアガラ瀑布、さらに、手押し車に乗せられては成功の確率は疑問なることは誰にもわかります。従って、静寂。その時、軽業師のエージェントの男が名乗りをあげたとの内容が記載されています。口先だけでなく、本心から信頼を寄せてくれる人がいたのです。軽業師は深い感銘を受けたと書かれています。

本当の信頼とはどういうものかを非常に端的に表現しています。しょっちゅう違うことを発言しているようでは信頼の序の口以前です。1000回の浮ついた言葉より、たった一言で人間の心が動かされる瞬間を見る感じがします。

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