


折々の言葉
リーダーシップ経験の積み重ねこそが決断力を養う
ある経営者から相談を受けた時に感心したことがあります。アドバイスを受けた後の彼の迅速な決断力でした。決断に至るこのスピードに加えて、今後の戦略展開に於いて彼が正しい決断を出来れば、会社が更に大きく成長するのではないかと楽しみにしている経営者の一人です。
私が考えるに、決断力が最良のものになるか否かは、その経営者のリーダーシップ経験の培い方と深い関係があるように思えてなりません。すなわち、決断は常に最良でなければ経営者の任務を果たせませんが、そのためには、日常の経営職の仕事の中で本人がどのようにリーダーシップを発揮しているかの経験態様と高い相関関係があると思えるからです。
本日は、経営者が最良のリーダーシップを発揮するために普段の仕事の中で何に留意すべきかを述べ、結果として最良の決断力が発揮できるようアドバイスいたします。
1.事実の把握
まず常に現実、現場をきちっと把握していなければなりません。
忙しさ、物理的な距離とは関係なく、工場などの現場で起きている現実を常に明確に把握すること、その上で判断をすること、これがあらゆるリーダーシップの始点です。特に、間違った事実情報を基にした経営判断は悲劇を生みます。
多少語弊がありますが、誤ったと思えるアメリカの大統領の決断の例です。大統領は自国の大義名分を貫くために、中東のある国と新たな戦争を始める決断をしましたが、その判断のベースとなった材料が、本当に事実を正確に反映していたか大きな議論になったことをご記憶かと思います。新聞報道などを通じて戦争開始の前提となる事実に国民が疑念を抱いたころから、大統領に対する信頼が失せ、彼のリーダーシップに陰りをきたすことになったのは、他山の石とすべき例です。
2.皆が納得する目標設定
次に、目指す目標に善なるものが感じられるか否かです。
先ほど述べたアメリカの決断の例でもしかりです。戦争を始めるに値する大義があったか否かが問われました。
企業の場合では経営者の哲学や理念が会社の目標に反映されるケースが多いです。従って、会社が何のために生存するかの大義が重要です。社会の中で善と思われる生存領域で会社が生きているかです。会社の目標や考え方を誰が聞いても「そうだね。」と映る善なる目標が必要です。そうでないとリーダーシップを継続して発揮できなくなると考えます。
1939年9月1日に第二次世界大戦が勃発し、ドイツがポーランドに突然侵攻、これに対抗して、すぐイギリスもフランスもドイツに宣戦布告をしました。特に、イギリスのチャ-チル首相の演説は国民の心をとらえたと言われています。彼は、前任のチェンバレン氏の取っていたドイツに対する姿勢と違い、ヒットラーと対峙して自由を守るべしとの明確な姿勢を持っており、それを言葉に発していました。チャーチル首相のこの演説にイギリス国民は、「その通りだ。」と大義を感じ、強制でなく自由のために自らが団結して戦ったのは歴史が語ってくれます。善なる大義で共感を得るのがリーダーシップの発揮にいかに大事なことかを如実に物語っています。
3.語り続ける
次に、社員も含めて皆が、その目標に共感し賛同してくれなければなりません。そのためには、目標を実現するための全体のストーリーを語る力が不可欠です。一度や二度では社員に通じません。何回も何回も、少し言葉を代え、少し新しいことを付け加えながら、語ることです。
前出のチャーチルは、いろいろな場所で自国民に対して語ることを忘れていませんでした。語ることの積み重ねが功を奏した部分もあり、このリーダーの下で対ドイツの戦いを遂行しようとの国民の賛同を得ることに成功していったのではないでしょうか。
4.リーダーとして、それなりの実績を造る
社員の共感を得て、「その通りだ。俺も実践しよう。」と本気で彼らの行動につなげてもらわねばなりません。これには、リーダー自身がそれなりの実績を造らねばなりません。リーダーが示した目標が「実現できるのだ。」ということを、実績をもって示すことです。実績をつくるためには本人の能力がもちろん必要です。しかし、本人一人で努力するのでなく、経営者という立場上、支えてくれる人々の協力を得てはじめて実績造りに繋がることを忘れてはなりません。
このために経営にあたる早い段階で、支えてくれる主要な遂行ポジションを適材で固めてはいかがでしょう。どのポジションが目標を実現するために重要なのかを判断し、そこに信頼のおける人物を配置することです。配置に迷いが出て一番重要なポジションのアサインにブレが出ると脇が甘くなり、その結果、リーダーが実績を出すのに遅れを生じ、社員からの信頼を勝ち取る時期も遅くなる失敗例をよく見てきました。こうならないように社員の協力を仰ぎながら、早い段階で経営者としてそれなりの実績をつくることがリーダーシップにつながります。
5.「場」を造り、任せる
ある程度リーダーの実績が出ると、それに従う社員が力を発揮できる「場」を提供しなければなりません。「場」を提供して、彼らに任せることで、経営者の指示を誠実に実践すれば、「自分も上手く出来るのだ。」という自信をつけさせることで、業容発展のスピ-ドがつき、リーダーシップが地に足が着いたものになっていきます。
6.「分身」の育成
しかも、これを組織として実践するには、経営者の「分身」を沢山育成できるかにかかっています。
この頃になると、いろいろな「場」を通じた教育研修の重要さが増してきます。分身の育成で組織の広がりを持った展開が出来るようになれば、会社の成長スピードが増していきます。結果、本人のリーダーシップが増大したことになります。
リーダーシップ経験の積み重ねがあっても、正しい決断に失敗することがあります。しかし、そうでない場合と比較し、リーダーシップ経験の積み重ねがある方が適切な経営決断につながるとすれば、日常のマネジメントの中でリーダーシップを意識しながら経験を積み重ねる意義がすこぶる大きいと考えます。
センターの社員をやる気にさせる(2)
前回の続きです。
4.定石18 力量を発揮する「場」をつくる
社員は皆、自分の実力をどこかで発揮したいと思っています。そのためには具体的な「場」が必要です。
長と名のつく人が、前回述べた対話で部下を知ることになったとしても、部下が自己の力を発揮できる「場」を提供してあげなければ部下の喜びは半分です。しかし、この「場」が意外に少ないことを長たる人は認識すべきです。
組織内でのフォーマルな「場」は期の始めや中間期の組織編成でかなり決まってしまいます。しかし、その制限の中でも長たる人は部下の力量を発揮させるあらゆる工夫をしなければならない立場にいます。従って、日常定められた「場」のみならず、インフォーマルな「場」でも結構ですのでとにかく「場」を用意してください。この「場」で周囲が意外と思う力量を発揮する人も出てきて、その人を見る周囲の眼も変わってきます。それがきっかけで、チームとして仕事のやり方が変わってくることがあります。
小さなことですが、これらの積み重ねで初めてマネジメントが上手くなることにつながるのです。このことを理解しながら、長は部下が踊る「場」づくりに邁進すると、センター改善のきっかけが見えてきます。
5.定石7 喜びも苦しみも分かち合う「湿り気のある関係」をつくる
センターの社員は大半がチームで仕事をしています。入社して一人前になるために、チームの上司から沢山の指導を受けます。自分の実力はチームの力を借りて初めて発揮できるようになります。
また、長は指導した部下が成長していく姿を見て嬉しく思います。逆に指導した社員が自分のグループから抜かれていくと思う心理が蔓延しているとしたら、そのセンターは、本当の意味で助けあうチーム環境がまだ出来ていない証左です。
改善は可能です。長たる者は、私が本の中で紹介した「湿り気のある関係」を造る努力をされることを薦めます。最初は孤軍奮闘です。しかし、このことに賛同する同志が増えることで、センターのいろいろな改革に勢いが増してきます。同じ船に乗っている感覚を社員が肌で感じるようになってきます。センターのみならず会社全体にとっても、中・長期的な利益の増大に不可欠な定石だと考えます。
6.入り口をしっかりすること
当たり前のこととして、私の経営の定石の中には明示していませんが、人の採用の入り口をしっかりすることです。以後の社内教育研修で成長できる伸びしろも、人によって違いがあります。出来れば伸びしろが大きい人を採用したいものです。しっかりした人材、会社の事業内容に即した人材を入口の採用のところで見極めることです。
人事採用にピカ一の担当者を置くのも方法です。最初の接点を持つのは、社長ではありません。採用される候補者が会社と最初のフェーストゥーフェースの接点を持つ相手は採用担当者です。採用担当者が会社のイメージを植え付けることになるのです。
7.定石7 社員の個性を大事にする
社員個々人の個性を把握して、彼らが育つ環境をつくり指導することです。
人により個性に特徴があります。学生時代の体験やその人の就業経験などから皆、違う個性を持っています。その個性は、その人が育つスタイルにも反映します。人事を担当する人に聞くと良く分かりますが、行動型や考え込む型などいろいろな人がいます。私が経営していた時も、その社員の型の特徴を把握しながら人事配置や担当を決めていました。
この特徴を把握して、その部下が一番ヤル気を起こすスタイルを上司は用意してやるべきです。行動型の社員には、とにかく彼の欲することをすぐにもチャレンジできる出番の環境を与えることです。考え込む型の社員には、彼が考える時間と材料を沢山与えると、彼のモーチベーションが上がります。また、一つのことを集中して考え込むほどではないが、周囲や全体の観察をしないと真剣に仕事に着手しないタイプの社員もいます。このような社員には、全体像を明示して、彼が興味を覚える切り口分野での環境を用意し指導することを薦めます。このように個性を伸ばし、それを発揮させる「場」を用意するにも前回の3で述べた通り、「対話をする」という忍耐強い努力がスタートです。
以上、ご参考になったでしょうか。
センターの社員をやる気にさせる(1)
先般、ある会社のコールセンターの視察に行きました。センターの改善が主たる目的です。このセンターを改善するには、いろいろなことが必要であることが分かりました。予想通りその中で、まず現場の長の立場の人に留意してもらいたいことが鮮明に浮き彫りになりました。良く考えてみると、これらのほとんどは私が『これからの社長の仕事』の中で「農耕型企業風土造りで企業を中・長期的に発展」させるための「経営定石」に包含されていることでした。
人の上に立つ人には、共通して会得していなければならないマネジメントのイロハがあることを物語っています。
本日は、現場の「やる気」を引き出すために、センターの長たる人がやるべきことの一部を、経営の定石との関連で述べさせていただきます。なを、定石の番号は私が本の中で付番したものです。
1.定石4 経営理念を明確に打ち出す
現場の長はトップ経営者ではありません。しかし、沢山の社員の上司という立場にいます。そのセンターが何を目指しているのかを、彼の立場で現場集団に明確に示さなければなりません。
すなわち、現場の長は目指す目標を定め、現場の社員に分かりやすい言葉で、その内容を説明開示しなければなりません。これは当たり前のことに思えますが、意外とこの最初の所が不明瞭になっていることが多いのです。特に、急成長したセンターなど、理念の整理が追いついていないところで起きやすいことです。
目指す目標が明確に打ち出せていないと、現場の社員はそれぞれ自分が何を目指したら会社から評価されるのか、上司が自分に何を期待しているのかが分かりません。結果として、上司の指示と部下の行動に大きなズレが生じて施策が後手に回り、センターのモラール向上が期待できないことになります。
2.定石15 意識を変える
長たる者は、現場に変化をもたらし、現場の社員の意識を変えることをすべきです。これはあらゆる組織に関して言えることだと考えます。現場のセンターでも、小さい規模が急激に大きくなった場合、社員や現場の責任者の意識がセンターサイズの拡大に追いついていけない現象が発生することがあります。特に、意識を変えるべき立場の長自身が変化に追いついていない場合は、事態が深刻です。詳細は省きますが、他の解決策を同時並行的に推進しないと混乱の解決に時間がかかりすぎることを付記しておきます。
長も社員も毎日ルーチンの同じような仕事をしていると、一見みえる場合が多いのですが、実は顧客の要望は日々変わってきて、革新を求めていることに気づいていないのです。そのことに気づくのが遅れて、センター全体がマンネリ状態で走っていることによく出くわします。このようなセンターでは、意識を変えるきっかけづくりより、当面の顧客の要望対応に追われて混乱をきたし、社員からいろいろな不協和音が聞こえてくる事態になります。
上から下までの意識を変えるきっかけが必要となりますが、一番の責任は長と名のつく人にあります。上記に記載した通り明確なセンター目標の明示を前提として、成果を上げた社員を褒めて認めてあげる、部下の仕事の内容を少し変えて、本人がより上位の仕事を要請されるようになったとの意識を持たせるのも方法です。いずれにしろ、単なる言葉のみでなく具体的な業務を通じて意識改革を図らねばなりません。
3.定石8 対話をする
対話をすることは相手の考え方をしっかり把握することに通じます。一人一人の部下の特徴、強みを知らない限り、更に上位の仕事を任せる具体的イメージが長たる人に湧きません。
上手く運営されていないセンターの最大の特徴は、上司が部下のことを意外に知らないことです。風評などで知ったつもりになっていることが多いのです。これでは、それぞれの社員が本当は何を目指して仕事をしているのか分からないので、センターの舵を取るのが難しくなってきます。
対話には時間がかかり、しかも聞くことの忍耐も必要とします。上司が部下個人の心の中にまで入り込むことは戒めなければなりませんが、まず、その人を「知ること」です。個性も違います。何を褒めたらその人の琴線に触れるかも個人によって違います。
まず、対話を通じて「知ること」で、長たる人に、部下をどのような指導をしたら良いかのヒントが湧いてきます。
企業の活動場所の選択
日本企業が事業展開や営業活動をするにあたり、主たる舞台を国内にするか海外にも広げるかの選択についてはいろいろな議論があります。
傾向としてグローバル化すべしとの意見が多くなってきています。他方、いろいろな事情でグローバル化の進展がはかばかしくなく、国内へ活動の一部を移転すべしとの意見もあります。
私は、事業活動の舞台については、その企業の目的遂行に照らして最善の選択をすべきだと考えています。
P.ドラッカー氏を持ち出すまでもなく、全ての企業は顧客の維持開拓をしなければなりません。このことは、民間企業にとって利益を出しつづけねばならないことと深く関係します。顧客開拓を進め優良な顧客を維持していくことで、結果としてその企業が中・長期的に利益を出すことになるからです。
従って、事業や営業活動の舞台の選択にあたってのポイントは、どうやって利益を出せるかにかかっています。
1.まず、顧客を開拓するために、マーケットをどこに探すか
自社の事業特徴に照らして、今後も国内で大きなマーケットが期待されるなら、その企業は国内で活躍できます。この場合、海外に進出することで新たなリスクを負う必要は無いかもしれません。新興国等海外の市場は成長が著しいことも事実ですが、国内で経験するものとは違うリスクに会うことが多く見られるからです。
このように、あくまで自社の顧客開拓との関連で判断すべきです。それにも拘わらず、一義的に日本企業はグローバル化をすべしとの議論には賛同できません。
2.次に、その選択がトータルなコストの削減につながるか
中・長期的に利益を確保するため、生産手段に関わるコストを下げるための経営努力をするのは当然のことです。材料の仕入れコスト、人件費の削減など、その企業のコストに占める割合が多い費目に注目し、これを下げるのは経営の責任です。
しかし、考えなければならないのは、そのような個別のコスト費目の削減がトータルなコストの削減につながっているか否かです。ご存じの通り、顧客に販売する商品やサービスが顧客に届くまでにはいろいろなビジネスシーンが生じます。このシーンとの関連で言えば、顧客への商品などの提供が完了するまでのサービス・デザイニングの考え方を私は重視しています。サービスはその利用者の立場に立ってデザインされるべきだからです。顧客が利用に供するために、すべての個別の部分が繋がっており、且つ適正にデザインされて始めて顧客の評価が得られ、企業の利益に資することになると私は考えています。クォリティーも含めた全体が満足いくものでなければ、顧客は選択してくれません。ノミナルな個別費目がいくら安くても、サービスが繋がらず、クォリティーを加味した全体に顧客が満足していないのであれば、生産性を総合すると、それは低いはずです。結果として、トータルなコストの削減には至らないことになります。最近、一部の生産を海外の工場から国内にシフトする企業が増えてきたのは、この点にも一因があるものと考えます。留意したい点です。
3.村的なメンタリティーを全て排除してしまうか
日本企業は村的なメンタリティーをすべて排除したほうが良いと主張される方もいます。また、村的発想を全て排除しなければ海外での競争に負けてしまうと主張する人もいます。果たして本当にそうでしょうか?
悪い意味での排除の論理を前面に出した村的メンタリティーは、百害あって一利なしかもしれません。しかし、私は、村の特徴である、助け合うメンタリティーと風土は残すべきと考えています。日本人が誇りとする、助け合い、周囲との調和を保つ風土は、長い目で見れば国内外を問わず企業の利益を創出するためにメリットがあると考えるからです。詳細は、『これからの課長の仕事』(ネットスクール出版)に譲りますが、日本的経営の特徴とされる村的な発想やメンタリティーも十分意義があるものと考えます。
4.以上のことを前提として、いずれの選択をするにしても、企業が取り組むべき中心課題は、国際的に活躍できる自律した人材の育成です
このため言語の課題もクリアすべきですが、やはりその人材の個性を重視して、しかもどこの市場でも活躍できる自律的人材の育成に主眼を置くべきです。何処にいようと自分が関与している事業への貢献は当然のこととして、それに加えて、会社全体への貢献に意欲を燃やせる人材の育成です。
働く社員は、会社へのロイヤルティーより自分の関与している事業へのロイヤルティーを重視すべきだという考え方もあります。身近なことに全精力を注ぐのは当然のことです。しかし、それが極端になりすぎると、発生する事態からのリスクを、私は危惧します。会社や周囲の同僚よりも、自分の昇進のみを最優先し、結果として、自分のみに光が当たれば良いとの発想をする人材が増えかねないことです。ほとんどの企業では、人材層の点でも20:80の論理が当たると思います。この論理の環境下で先ほどの極端な発想をする人が増えると、20に該当する人は良いとして、80の人をどうするかの解決にはならないからです。むしろ、この80の人材層のレベルアップ、人材教育こそ重要ではないかと考えます。
しかも、人材教育の内容としては、個性豊かな自律的な人をつくることです。海外だろうが国内だろうが、今一番欠けているのは、人材の個性だと思うからです。加えて、まず日本のことを、日本の良い所を徹底的に学ぶことです。言語を先行させるより、日本の伝統、文化、技術背景、歴史等、日本を代表して物が言えるくらいの、人間としての教養と力量を備える人材教育が優先されるべきだと思います。深いレベルで相手の国との違いを明確化でき、且つ、日本的経営の良い部分を相手の国に納得して移植させる力となるはずです。単なるスキルの習得のみでは、海外だろうが国内だろうが、沢山の人の上に立つリーダーとなるのは難しいと考えるからです。
以上、ご参考になったら幸いです。
革新する
どの会社でも、トップが革新を唱えています。当然のことです。それ無くしてはその会社の存続が危うくなることもあるからです。ところが現実には、トップの言葉と裏腹に、そもそも革新が生まれる社内環境が整備されていないことが多いのです。これでは、トップの言葉が空を切る空しい状態になってしまいます。
そうならないためには何に留意すべきか、という視点から、本日は革新についてふれてみます。
私の経営体験から言えば、これに不可欠な要素は、
1.まず専門性です
今や、各分野が細分化されすぎるほど細分化が進んできました。細分化されたそれぞれの分野での専門性がますます要求されています。
従って、全くの素人が模倣品は別として革新的なことを突然打ち出すのは、万が一のレベルだと思います。それほどゼロからの革新は確率が低いことが多いからです。時に専門分野以外で突拍子もない革新的なことをする人がいますが、やはり、一つや二つの専門分野を持ち、それを生かして何か新しいことを思いつくのが一般的です。ある分野を徹底的に究明していくと、他の分野でもノウハウの活かし方のヒントが掴めるようです。
2.その上で、クリエイティブな思考を発揮させることです
革新にはクリエイティブな思考が不可欠です。この思考を発揮させるには、何といっても本人のモチベーションが重要です。実は、これが革新のための原動力だと言っても過言ではありません。外部的なモチベーションも重要ですが、その人の内部から湧きあがるモチベーションが、革新的な行為には一番効きます。しかも、経営サイドからの努力次第で、これを高められることが多いのです。
余裕と言うか遊び、情熱、目的意識など、経営サイドがコントロール可能なこともありますが、クリエイティビティーとの関連では何と言っても経営上の遊びがポイントです。社員が自由に考え、やりたいことをやれる環境、すなわち、経営上の遊びの部分を経営側が如何に用意するかです。情熱や目的意識があっても、その社員が義務感から、あるいは、仕事感からやるのでなく、本人が好きなことを自由に思考し実行できる遊び的な環境があることがクリエイティブな思考発揮に望ましいのです。
3.トンガリ社員を大事にする
イノベーションを起こす人の特徴は、彼らが常に好奇心旺盛であることです。何かに興味を覚えると、我を忘れて没頭するような資質の持ち主で、私の言葉で言えば、周囲の人と比較して、何かが「トンガッている」人です。
このようなタイプの人には周囲から誤解を受けやすい人が多いのですが、組織として革新の糸口を開く資質を持った人が多いと思います。物事を違う角度から観察でき、新しい切り口を発見できる人が多いのです。その人を誤解して組織から除外しようとすることで彼の好奇心を萎縮させるのでなく、温かく見守り好奇心を維持させて彼に次の挑戦の機会を与えることです。
4.関連付けの動きをサポートする
「トンガリ」人間が多数いたとしても、専門家がそれぞれ細分化され分離した状態では、新機軸を見出すのが難しくなっています。そこで、彼らを統合し、集団で「トンガリ」思考をサポートすることが必要です。関連付けをして考え、コラボレーションするのです。それぞれの専門家がお互いの専門分野を公開しながら、協力・サポートできる状態にすると、新しいことを見つけることにつながります。いろいろなものを関連付けて皆で全く新しいことを見つけることが出来るのです。
このためには、関連付けのコーディネートが出来る統合的思考をもった優秀な社員が必要となります。専門家のトンガリ部分を削がないで、且つ、専門家同士がけんかせず、集団で新しいことに挑める手綱さばきが上手い人です。「自分の会社にはそんな人はいない」と言いながらも、社内をよく捜せば、このような素質を持った人が数人は必ず見つかります。その人に権限と責任を持たせプロジェクトを任せることです。
5.企業風土です
制度があり、柔軟な思考の持ち主がいるとしても、その社員が何かにチャレンジでき、失敗してもまたトライできる風土、周囲もそれを暖かく見守れる企業風土が不可欠です。革新的なことに挑めば失敗はつきものです。それが一度の評価で封じ込められることなく、周囲の目も気にならない、企業全体がそのような人を応援する気風があると、社員も心置きなくチャレンジし、自分の会社に貢献しようとする意欲が湧きます。
以上、ご参考になりましたでしょうか?
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