


折々の言葉
「リーダーとしてのマインド」(2)
前回の続きです。
ここで私が目指す「リーダー人材」になるには具体的にどういうマインドを持ったら良いのでしょうか。
4.協業のマインド
協業の発想を重視しています。取引先とともに成長する視点です。そういう取引先を選ばねばなりません。
買う側と売る側の交渉で気を付けねばならないことがあります。
仕入側の立場も購入側が尊重しなければ、長い付き合いはできなくなります。急場で助けてもらえなくなるからです。
私が言う「三方一両得」の発想で、皆がそれ相応に利益の分配、最悪は、損失の分配にあずかる発想です。
5.長所を見るマインド
さらに、上に立つ人は、部下の長所を見る癖を持つことです。
人間誰でも自分本位で発想しやすいものです。
どうしても「自分はしっかり仕事をしている」のに、「部下が仕事をしないので」計画が未達だと、部下を責めやすくなるものです。
はたして、この発想で皆が得をする展開になるかです。
部下の短所のみ見るとその部下に安心して仕事を任せられなくなります。いつも心配することになります。
部下も思い切り仕事にエネルギーを投入できません。いつ怒られるかわからないので戦々恐々安心できないので、仕事の効率など上がりません。
この結果は最終的にはその上司に帰ってきます。あたかも「ブーメラン」のようです。この場合、上司も部下も会社も誰も得をしていない「三方一両損」の最悪のパターンとなります。
6.「一人結果責任」のマインド
結果はリーダー一人の責任になります。
リーダーが「自分は一生懸命仕事をしているのに、部下が・・・」の発想では、ほとんど例外なく、事業の運営サイクルは負のスパイラルにはいります。
こうならないためには、その責任者が、結果は自分一人の責任であるとの基本的認識を持つことが重要なのです。
先ほど述べた通り、部下の長所をどう褒めるかの発想に切り替えることです。たまには、部下を本気で怒らなければならないことがありますが、そこにかける比率をうんと低くすることです。
7.戦略を「思考する」マインド
私は、「考える」、一人で考えることを非常に大事にしています。
「わくわく元気会」の勉強会でも、ことあるごとにこのことを言っています。
「農耕型企業風土」づくりのキーとして、個人が自立してこそチームプレーをレベルアップできることを強調している項があります。「最初に、適切に、仕事をする」を個々人で考えることの事例です。真剣に何をどうしたら全体の目的を達成することにつながるのかをチームの一人として真剣に考えることです。
これを慶応義塾の創設者、福沢諭吉先生は「独立自尊」と表現されたかもしれません。「一身独立して、一国独立す」とも言われています。横並び的発想や群れることを排して、自立を促しています。
一人でじっくり考えることで人間成長するのではないでしょうか。
一人だからじっくり考えるとも言えますが、考えて、考えて人間ははじめて独り立ちすると思います。
8.事業展開の中での「仕掛け」のマインド
中・長期的に成長・発展する会社には、「仕掛け」、「仕組み」があります。
このことを「これからの課長の仕事」と「これからの社長の仕事」で書きました。
しかも、「人間臭い」仕掛け、仕組が今必要です。なぜなら、「乾ききった人間関係」に飽き飽きし、もっと「湿り気のある関係」に皆が重要性と魅力を感じているからです。
入社3年目の社員をしっかりフォローするために、新人を「里子」とみなして「里親」を、また2年目の社員に、「里兄、里姉」の役目を与えるバーチャル家族の共同体を会社の中に作った社長もいます。
事業承認を失くした例もあります。スタッフの才能、思いを最大限引き出すため、承認などの手続きを省略してまず取り掛からせるためです。
わたしは、収穫祭を兼ねたイベントを重要な「仕掛け」の一つとしていました。役員が社員、家族や取引先をイベントに招待して、徹底的に楽しんでもらう仕掛けです。
集まる人々の醸し出す雰囲気や人間集団の出会いを通じて、会社との一体感を醸成するのに役立ちました。
また、週間報告書などでの対話や自筆のコメントを書く仕掛けも「人間臭さ」の実践でしたが、詳細はほかの項に譲ります。
9.社員の発想を柔軟にするマインド
企業には飽くなき知の探究と知の深化が要求されます。
知の探究のために、常に新しいことに取り組まなければなりません。即ち、幅です。
知の深化のためには、自社の得意とするところを深堀しなければなりません。これまた、新しいことに触手を伸ばすことに関係します。
このためにはいろいろな方法があると思います。
一つの例として、米国の3Mで採用をしているといわれる方法は、一定の自分の業務時間に日頃アサインされた業務以外に使ってもよいというものです。その時間を新しいことを開発するアイデア醸成のために全社員が使うとすれば、どれだけ新機軸につながっているか想像してみてください。
この事例のように新しいことに触手を伸ばさなければならない危機感を共有し全員を巻き込み、アイデアを出してもらい、それに本気で取り組む仕掛けを成功させるには、企業文化が関係するのでないでしょうか。それを醸成しようとするリーダーとしてのマインドが試されます。
「リーダーとしてのマインド」(1)
社会に何を築いていくかの根本的マインド
「儲かる会社」、「儲かる事業」などという表現をよく耳にします。
会社としての最大の目的が、たくさんの顧客を発掘して、結果として利益をあげることだとすれば、「儲かる」ことは当然の表現です。会社を支える株主を考えれば、所期の利益を上げ、「儲ける」のはリーダーとして最小限必要なことです。
しかしながら、これだけで十分でしょうか?
リーダーにはもっと大事なことを目的の一つにして欲しいと私は考えます。
その会社が業界の中でどんな新しい橋頭堡を社会のために築いたか、築いていこうとしているかが大事なことではないでしょうか。
リーダーにはある種の野望があります。この野望が単にリーダーの私利私欲でなく世の中を変革して新しい何かを築いていくことになれば、これくらい幸いなことはありません。
長いスパンで考えると、結局はこのことがその会社の価値を決めることになるのではないでしょうか。
リーダー人材づくり
社会のために何を築くのかの内容は、リーダーの野望やその事業が置かれた業界や業種によって違いがあります。
私は、いろいろな過程を経て、「人つくり」で社会に橋頭堡を作るのが一番と考えました。しかも、自分を高めつつも、集団のことに配慮し、人の心に情熱と安心感を抱かせることができるリーダーになれる「人つくり」です。
このような「人つくり」こそ、今の時代に必要だと確信しています。
私個人はHow-toにたけた「人つくり」ではなく、上記のような「リーダーになれる人材つくり」こそが、一番の社会貢献になるものと考えています。多少コストがかかってもこのような「人つくり」に重要なターゲットを置き、これで会社の社会的価値づけをしようと考えて経営していました。今もこのスタンスは変わりません。
ここで私が目指す「リーダー人材」になるには、具体的にどういうマインドを持ったら良いのでしょうか。
1.顧客密着を徹底するマインド
私が事業で常に発想していたのは、自社の商品が本当に顧客に受け入れられているのかを常に振り返ることでした。
売れないのはあくまで現象で、顧客に受け入れられていないその背景があるからだという根本的認識です。
顧客の要望を、いろいろなチャンネルを通じて把握することから始まります。汗をかく地道な仕事になります。
それでも顧客の声を聴き続けると、「顧客に受け入れられているはず」という社内の力のある部門の一言で全てを通してしまっていることが、意外に会社の成長を大きく妨げているかを如実に反省する瞬間に遭遇します。
2.集団の知恵を生かすマインド
同様に、自分の会社が社員にどう映っていうのかを、経営側として常に気にしていました。今もそうです。
これは社員に媚を売ることを言っていることではありません。
経営陣、社員、取引先などの共同体組織がたまたま会社の形態をとっているという理解から発想しているからです。
会社の内容が社員によく映ることは、彼らの脳の回転を積極的にすることにつながります。全員で協力して会社をさらによくしていこうという発想につながります。結果、顧客に受け入れられることにつながるのです。
特段大金をかけて「社員満足度xx調査」などする必要性などありません。社員への映り方の把握のために、有益な情報は社内のそこら中に沢山落ちているからです。
施策が社員にどう受け入れられるか、どう映っているかを出発点とし、集団の知恵で創意工夫をこらしPDCAを回して、自社の商品を買う側、利用する側の視点で、皆で改善することにつなげていきます。商品の開発も、顧客の要望をどうくみ取り自社が顧客と一緒にいかに繁栄していくかの社員の視点を基本とします。
3.何に差異化を置くかのマインド
さらに、差異化をどうするかを重視しています。この発想がある限り、「景気の波が・・・」と他のことを理由にする議論から少し距離を置けることになります。
景気の悪い時期をプラスに利用できる発想もでてきます。
皆が苦しいこの時期、自社も苦しい。
しかし、逆手に取ってその期間に自社の差異化に時間とエネルギーを費やせば、競合より相対的メリットが多く出せます。
一例として、競合に先駆けて顧客をサポートする体制をどう作るかに、景気が悪いその時期にこそ取り掛かる。このことがどれだけの大きな差異化になるのか、実は、その時より後になって分かることなのです。
上司の“こころ”のケアと称する甘え
聞いている、聞いていない
「何だこれは、俺は聞いてない!!」と突然怒りだす人がいます。
私も過去、部門を任せていた組織の上層部の部長がその部門の部下に対してこれに類した発言をしていたのを、横で見聞きした体験が何度となくありました。その発言に至ることになった正当な経緯が無くはないと思ったこともあります。
しかし、いま振り返ってみれば、ほとんどの事象が見苦しく映ります。
アクセスしようと思えば、その上司は事前に関係する情報にアクセスでき、「俺は聞いていた」ことばかりです。部下は簡単な口頭報告をしているはずです。
部下はその件の相対的重要性の低さと、他の案件に関わる上司の多忙さをおもんぱかって、その上司に個別具体的な詳細説明をしなかったようなケースが多いはずです。全くの善意からの場合が多いと思います。
このような発言をする上司はほとんどのケース、自己採点は高いが、会社全体の管理者で実施する相互評価点の本人分は低いはずです。
自分の力量のなさ、自分を大きく見せたいことの裏返しとみるこの発言が「何だこれは、俺は聞いてない!!」となる場合が多いはずです。この一言で業務がすべてストップしてしまいます。
このことでその上司は周囲を戸惑わせ、自分の権威を誇示しているようですが、部下たちは普段から自分の目で見ていますので、発言の背景をすべてわかっています。
何故、この発言?
なぜこうなるのでしょうか?
最大の原因は、この上司の精神的弱さにあるかもしれません。見くだされ感で不安なことは、存在感の誇示と裏腹の関係です。部下に対して自分の“こころ”のケアまで要求しているのです。
このような方法以外で自己の力を誇示ができない精神構造があるその上司は、かわいそうな存在です。判官びいきの多い軟な組織では、その人へのひいき目が前面に出やすいことになりますが、これではその会社の成長は危うくなります。
どうせ力が不足しているなら、業務をストップさせないような判断や指示にしてもらいたいものです。
その方がその部門の業務がスムーズに回るからです。業務の重要性の尺度をもとにそれが部下からの具体的な内容説明をもとにして、合理的な判断を下すべき案件か否かを、日常的に部下がわかるようにしておくという上司の本来の責任を全うしていれば済むはずです。
「何だこれは、俺は聞いてない!!」というこの現象面のみをとらえると、私の主張する「農耕型企業風土」づくりの経営の中の“こころ”のケアに関する主張と一見似ていますが、全く似て非なるものです。
私の「フォーミュラ」では本来上司が部下の“こころ”のケアをすべきなのに、この場合逆転しています。部下には上司の生殺与奪の権限が全くないのに、上司の“こころ”のケアまで要求されるることになります。
“こころ”のケアと称して上司のメンツのみを重視する風土は、部下が上司に媚を売ることにつながり、組織として生産的・民主的な話に全くなりません。社員への公平な対応を期待できなくなります。
困難にあたっても、一つの目的に向かって全員一致して解決の努力を惜しまない「農耕型企業風土」づくりの中での上司、部下の姿とは違います。
上司という個人を部下全員が、なんとなく腫れ物にでも触るごとく世話をするという、全く非生産的な強権的な組織に成り下がってしまうという意味で組織の本質的な欠陥を秘めています。
対応策
どうすればよいでしょうか。突き放すことです。大人になった社会人です。
そのような甘えの構造がある限り、「自分は特別だ」という職位やタイトルの庇護のもとに相手を従わせる性癖の人だからです。目を覚まさせる必要があります。突き放すことで自分の置かれた立場の理解と、自らが部下の育成に責任ある行動をとらねばならない自覚を持つことに気づく時が来るからです。
さもなくば、もっと部下の少ない部門に配置転換すべきです。そうすれば自分の立場で「仕事をする」ことが何を意味するかを自分で理解するはずです。積年このような庇護のもとに育ってきた企業風土の弊害で、会社の成長のスピ-ドを鈍化させていることを本人に理解させねばなりません。
皆さんはこのような上司にならないことを、切に祈願します。
自分を革新する努力をしていますか?(2)
続きです。私が過去の経営を振り返って見ると、次のようなことに留意していました。
「考え抜く」
3.方向を決めたら徹底的に、その実現のために自分が埋まってしまうくらい真剣に考え抜く努力をしました。
もともと、方向もかなり高い目標でしたから、尋常な方法では実現しません。従って、「考え抜く」ように変えていきました。
社内の議論で、「一般的に…です」、「世間では…しています」的教訓めいた発言があったら、「それは何故?」と聞き返して方向の実現にその手段が適切かを真剣に考える習慣を身につけました。
とにかく、寝ても覚めてもそのことを考えて、手帳にメモしていくと随分と遠回りをして考えていた事が後でわかりますが、それも前回で述べた寄り道の一つです。
「好き嫌い」
4.最後は、「好き嫌い」で判断をすることにしていました。
五感を駆使してマーケットを読む努力をしましたが、最後の最後の判断は、自分が好きか否かで結論を出していました。好きでないと自分を変えるエネルギーが失せてしまう感じがしたからです。
「プラス思考」
5・それでもくじけそうになることがあります。このような時、私はこうしてマイナス思考からの脱却し「プラス思考」に切り替える努力をしていました。
過去の失敗をくよくよしないにはどうしたら良いでしょうと、時々相談を受けます。ご参考になればと思います。
a) くじけそうになる最大の原因は、「なぜ、自分がこんなしんどい仕事を引き受けなければならないか???」の思いです。
自分自身に対する愚痴や不平が出るときですが、出会うべくして出会った運命と考え、見方を変える思考パターンに入る努力をしていました。この時に、必ず「社員の幸せ」ということが根底で自分の心を引っ張って奮い立たせていたと思います。
社長という立場の自分を客観視することにも通じることです。自分の部下だったらこの事態と社長の姿勢をどう見るのだろうかという客観視です。
イチローが、2009年の世界野球大会の決勝戦の延長10回、同点ツーアウト、1、3塁で彼に打順が回ってきたとき、自己を客観視して冷静に一人実況中継をし、感情が入りすぎて視野が狭くなることを防止した、という話を聞いたことがあります。
レベルの違いはありますが、分かる感じがします。
「今」に集中して客観的に観ることです。どうしても愚痴や不平から未来の不安を膨らませることにつながります。今を生きることに集中するのも方法かもしれません。人生80年で29,200日、700,800時間しかありません。今のこの1日、1時間をどう楽しく過ごすかです。
b)「できないこと」と「できること」に峻別して「できること」に集中する努力をしました。
完璧主義をやめる努力です。社長という立場でしたからどうしても、「できないはずはない」として頑張るクセがあるのですが、その考えを緩和する自由度を持つことにしていました。
悩ましい心理状態のときには誰でも自分自身に対する評価が一般的に低くなっています。プラスの側面も見て自分の成長した姿を勝手にイメージし、「乗り越えられる試練しか神は与えない(マタイ福音伝)」と試練を成り行きに任せたこともありました。また、少し、余裕ができて他の部下の評価も長所も短所もふくめて多面的にとらえられるようになってくるはずです。
「5年以内に上場」の公約を実現するために描いた「こうあるべき」リストをしばらくの期間封印して、少しわき道を行く自由度を持つようにしました。
c) 最後の手段として、「6つの約束」の自分のメモに戻ることにして「プラス思考」に戻していました。
社員に約束したこの紙面の文字から「できる!!」との声掛けをもらって、また、元気を取り戻せたとことを思い出します。
自分を革新する努力をしていますか?(1)
多分いろいろな方法があると思います。私が過去の経営を振り返って見ると、次のようなことに留意していました。
「尋常ならざる目標」
1.自分にしかできないと確信して、今ある状態より想定を超える目標を置いたことです。
会社の倒産危機に直面している中で、社員やその背後の家族の生活の安定を図るために「尋常ならざる目標」を掲げて、自己革新を図りながら同時に会社を変えるため想像を超える目標を掲げて邁進したことです。
会社が多額の累積損失を抱えて倒産の危機にあるとき、「5年以内に上場」などの公約をしました。なんとかこれを1年遅れで実現したのが実例です。
「バカになる」
2.自分は「変わる」という熱い決意をもって、「バカになる」努力をしたことです。
よく、「エリートがエリートらしく振る舞うのは簡単。バカがバカらしく振る舞うのも簡単。一番難しいのが、エリートがバカになること」と社員に言っていましたが、一面自分を「変える」ための言葉でもありました。
社会の既存ルールに乗せられた自分が、危機に直面したとき一体どのような価値があるのか疑問に感じ始めました。会社が倒産する、社員が去る、残った社員が必死で会社を支える、家族の生活が厳しくなるようなときには、エリートらしく振舞うことの邪魔が多いのです。
むしろ、会社の将来像を物の本からでなく自分の頭で徹底的に考え、社員と議論してそれを修正してよりレベルの高いものに作り上げて行くには、捨てることも思いつきました。
真っ直ぐな道でなく、自分が信じている道に少し寄り道をしながら社員と一緒に新天地を求め続けることに決めたのです。
自分の道をジグザグに走ることに決めました。不運は誰の人生にも不規則に存在します。自分の歩む道を不運と感じたら潔く思考回路を変更していくことにしました。
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