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折々の言葉 / 語り継ぐ経営

第188回 企業が生き残るために(2)

Posted on 2016-01-28

成功する企業の特色に関しての続きです。

 

4.規模の大小は別としても、マーケットのプラットフォームとしての役割機能を担った商品を持っています。

ここにプラットフォームとは、特定のユーザーや利用者集団を一つの利用環境にまとめて、それぞれの利用者が自己のマーケットを作り出せる、多面的な機能をもった製品やサービス群の仕組みです。

コンサルを依頼される企業の中でも、私はこのような経営センスを持った経営者なら指導し甲斐があり気合が入ります。

このためには何かに特化する視点が望ましいです。なんでも屋ではプラットフォームの発想になりにくいからです。しかも自分の得意とする分野に特化することです。隣の芝生の緑に気を乱されずこのプラットフォームを造り上げ、活用する参加者が最良の商品を出せる仕組みを提供することです。

このために、「今の状態で、3年先に自分の会社が生き残れるか?」を常にグループの長や社員に問い、考えさせ、利益をあげている今こそ労力と時間のかかるプラットフォームつくりに取り掛かることです。

 

5.常に変化への適応力を、組織として身に着けています。

昔も不確実な時代だったと思いますが、特に、今が政治や経済などの変わり目の時代だと、私は認識しています。

変わり目のシグナルを感知し、対応する能力こそが変化への適応力ですが、これをトップのみに委ねるのでなく、各部門毎にでも臨機応変に環境変化へ対応できる組織が肝心です。

レベル毎に鋭敏な情報アンテナと環境変化に対して、即動ける権限と力を与えられているのです。

6.「加える」ことにも増して「捨てる」能力を組織として持っています。

昨年の暮れ、ある会社の仕事納めの席で突然指名されました。急なことで準備がありませんでしたが、普段から会社が更に成長するために大切だと思っていたことが急に頭に浮かびました。「捨てる」努力についてです。

「私自身の経験でも「足すこと」に奔走して、次々に新企画やプロジェクトが出ないと満足できない頃がありましたが、ある時振り返って、足すことで、かえって中途半端に経営資源を浪費していることに気づきました。

それ以来、次期の事業計画策定の時期になると、何かを「引き算する」ことを常に考える習慣がつき今日に至っています。お蔭で企画やプロジェクトの切り口が鋭くなり、競合の追随を許さないケースが多くなったことを記憶しています。」と。

時代は変化しています。消費者がより賢くなってきています。

彼らは機能の多さにあまり魅力を感じていません。機能が多くなれば「高価の値付けが出来る」、「売れる」との企業側の論理など全く受け入れていません。日本は成熟した過剰社会で情報が氾濫している中で、情報におぼれそうで情報や商品や機能などすべてが過剰な社会です。

消費者は、過剰な中から魅力のないものを誰かが引き算してくれることを、本音では望んでいます。機能の多さよりその商品が自分をひきつける魅力を欲しているのです。

足し算で加えると商品が多くなったと勘違いして、何となく安心していた恥ずかしい時期が私にもありました。

私の年代ですと、多いことが豊かさの象徴でしたので、よもや引き算の発想が出にくかったのです。特に、予算や計画の達成が危うくなると、短期的に売り上げが欲しく新しい商品を出すクセがありました。このことが結果としてこれまでの商品開発コンセプトや商品のラインアップ体系を崩すことにつながり、自分で自分の商品を喰ってしまうリスクを冒していたのです。

「顧客は神様です。」とすべての顧客に対応する努力をして、かえって全体のコスト高、サービス不足に陥ってしまいました。顧客が抱く会社の良いイメージを混乱させることにもつながっていました。

考えてみると、我々は失うことに恐怖を覚え、他方、すでに持っているものに対する価値を比較的に高く評価する傾向があるようです。これが、「捨てる」ことが出来ない理由の一つです。ビジネスでこれを回避するには、今ある既存の商品に対して、これから事業を始めるとしたら、もう一度この事業や商品を自分が経営する価値があるかを問う勇気がないのが普通であることを、悟るのに私自身も少し時間がかかりました。

このような体験を踏まえながら、「引き算をする」ことをなんとか学んだのです。

ある段階から、顧客への情報を、出しすぎないように努力をしました。自社の強みを、これでもかと書き並べた会社の商品案内に、顧客が魅力を感じないと分かった時です。

むしろ、会社の強みの背景となる「企業風土」や「企業文化」に関する情報を積極的に出すことに専念しました。

また、核となる商品に投資を集中し、事業にメリハリをつけることを考えました。厨房(作る所)の中は徹底して効率化するが、顧客との接点のサービス提供部分では、非効率でも人間の対応を旨とするとの方針を貫いていきました。効率化する部分と非効率でも手間をかけ人間味や暖かさを出すことに心をたかったからです。

加えて、横に単純に拡げる水平平面作戦でなく、深堀する垂直作戦で成長することを敢えて考える努力をしました、顧客の数でなく顧客との絆・接点の強化、顧客との関係性や、総合でなく専門性などに配慮することで、少しでも「捨てる」ことにつなげ、会社を成長路線の乗せることが出来ました。

 

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