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第190回 企業が生き残るために(4)

Posted on 2016-02-11

前回の続きです。

 

組織や環境を考える

では、経営者はどうしたら良いでしょうか?

どの経営者も自社の現存の事業に不満を持っています。当然のことです。何か新しい事業を立ち上げて、既存事業による成長の壁を破りたいからです。

ところが、その思いとは別に、果たして自社からブレークスルーが生まれやすい組織や環境になっているかを自問自答する必要があるかもしれません。

構成する社員のモラールは、組織や環境と深い関係があることに世の中の経営者は意外と無頓着です。他の課題が多くて、これに配慮する余裕がないのが実態かもしれません。

イノベーションに関して言えば、私の経験では、誰か一人で新たなイノベーションをもたらしたケースは稀で、集団によって生み出されていることが多いのに、意外に、これへの配慮も足りません。

ここで新規事業を成功させるため、イノベーションが出来やすい組織や環境について述べることにいたします。

 

 

1.どのような価値を創造するかを、組織としてまず明確にすること。

企業が目指す価値は、事業目的やトップの感心、あるいは欲望によって質を変えてきます。これが本来価値の本質です。

その価値を、トップの独善的なものでなく、できれば衆目賛同するような目的や関心、欲望にし、社員の共感を得やすいものに出来るかは、トップたる経営者の力量にかかります。

いずれにしろ、この考えを組織の下部に落としこむに当たり、最初に、イノベーションの目的、理念、ビジョンを明確にしているつもりでも、意外にそうなっていないケースが多いです。リーダーは組織の目的を達成した暁に何が実現するのか、それが構成する個々人にどう関係していくのかを含めて、ビジョン(将来像)を伝えなければなりません。ビジョンは、その組織が目指すべき将来像の下書きと考えればよいでしょう。従って、注意深く明文化することが望ましいです。そうしないとチームの目指す方向性が定まらず、また、コラボレーションに支障をきたします。

 

2.コラボレーションが出来やすい組織を作ること。 

イノベーションには、どれだけ創造的な人材を見つけるかから始まります。外からの創造的な人材と既存のトンガリ人材を上手く組み合わせることで、イノベーションにつながることが多いのです。

プロと違う経歴やの専門プロの集団の組み合わせです。従って、コラボレーションの精神が醸成され、彼らが意見交換し協同しあえる組織をつくることが、イノベーションに不可欠です。

 

3.発見型の学習を育むため「遊び」を許容する組織とすること。

試行の過程で、長期にわたって実験や修正を繰り返し実行して問題の解決策を練るのが一般的です。いろいろな実験を繰り返すので、新しいものを生み出すには時間がかかります。他方、成果も求められますが、あまり厳格な計画にしたがって進むのでなく、実験を繰り返しつつ余裕をもって前に進むことが大事です。

突然性急に何か新しいことが生まれることを期待してはいけません。

試し、学び、修正し、再び試すこの姿勢の連続で初めてイノベーションにつながりますので、組織としては、ある種の「遊び」を許容する姿勢が不可欠です。

 

4.決定と参加者の貢献をリーダーが支える組織とすること。

チーム内で出た異なるアイデアを「組み合わせる」ことで、より優れた新たなアイデアが作り出せます。従って、決して、リーダー一人の発想に無理に統合させないことが、継続的なイノベーションにとって重要なことです。

意見を戦わせると、個人と集団の軋轢が生じることになります。

そこでリーダーは全体に重点を置きつつも、個々人の貢献を忘れずに彼らを励ます方法を取らなければなりません。他方、メンバーには自分が全体の一部であることを自覚させ、他の人も貢献していることを理解させることも重要です。

新しいアイデア出しに向けてリーダーが彼らを支え、彼らの良いアイデアを組み合わせていく力量が必要となります。

 

5.異質人材でブレークスルーを手助けしてもう組織とすること。

上記2で述べた通り、既存のメンバーのみでやるよりは、異質な人間を加えることがイノベーションにつながりやすいです。均質な人材である程度は成長できても、壁を破るには異質性や多様性が絶対的に重要となります。

ところが、これらの人材は、結構マネジメントしにくいのが事実です。「とんがっている」からです。このために、世の経営者や組織はすぐ、そういう人材を特定のラベルを貼って排除しやすいのですが、組織がこのことに慎重で我慢が出来るか否かが勝負の分かれ目です。

しかも、そのようの人材が一人で何かを達成できると考えてはいけません。やはり既存のメンバーとのチームプレーなのです。多様な知識や知恵を混合させるためのチームプレーです。異質人材の参加で初めはいろいろな不協和音を耳にすることになります。しかし、ここも我慢です。

そのために必要なことは、ここでも経営者の力量です。

 

6.顧客の論理を見いだせる組織とすること。

イノベーションに関してメンバー全員で討議すべきことは、自らの会社の論理でなく、どんな顧客が何に困っていてそれを如何に助けてあげれらるかのニーズを明確にすることです。

大半の議論でここが不明確なるが故に、時間ばかり無駄にしていることに気づきます。顧客の不満や解決したいことが何かは、顧客に聞かないと分かりません。その意味で顧客の声(Voice of Customers)程大切なものはありません。これを組織として意識的に集め、分析するために時間を惜しまない組織が望まれます。

これが分かった上でそれぞれの顧客に即した企画提案が可能です。商品を沢山売りつけ顧客が腹いっぱいの状態にするのは、中期的には得策ではないことも分かります。一元さんに売りつけ、いざとなったら逃げるという手法も論外で長続きしませんが、実体としてこれらのことをやっていることになる企業が多いのが残念です。ロイヤルな顧客からの継続的な利益の機会を失っているからです。

基本は、顧客と一緒に自社も育っていく発想が必要です。

 

7.チームに参加するメンバーの「興味」と「関心」を持続できる組織とすること。

イノベーション・プロジェクトに参加する全ての人は、自分の興味を満たしたい、自分の「関心」を満たしていきたいと思っています。

勿論、関心は人により違います。しかも、それが移ろいます。このうつろいゆく参加者の興味や感心と彼の能力とプロジェクトの課題のバランスを見定めて参加メンバー間の調整をするのが、一番難しいところです。このバランス取りを、組織としてやらなければなりません。この時、参加者の能力の点からだけ判断すると失敗します。誠実さのレベルも十分考慮して役割決めをリーダーがしなければなりません。

 

8.事業選択を適切に出来る組織とすること。

企業としては、ある段階で沢山の新規事業やプロジェクトの候補の中から事業選択をしなければなりません。一旦拡げた企画群の候補の中から企業の状況を総合的に考えて、優先順位をつけてどれに資源を集中するかの選択です。

この時、採択されない案件も出てきます。実は、その理由や事情説明を納得いく形でやらないと、組織として次の企画群の発掘に支障をきたすことになります。

優先順位の高い企画が選択されて走り出しても、選択した事業が利益を出すには時間がかかります。しかし、企業として予算や日程の縛りもあります。

リーダーは時間をかけてアイデアを煮詰めつつも、次へ進むタイミングを逸しないように根気を持ちつつ予算と日程に配慮しなければならない矛盾を克服していく難行をひきうけなければならない運命にあります。

以上、4回に分けて「企業が生き残るために」のタイトルで。成功する企業の特徴、大きく拡大する新規事業、そのための組織や環境について述べました。

皆様の参考になれば幸いです。

 

第189回 企業が生き残るために(3)

Posted on 2016-02-04

前回の続きです。

 

大きく拡大する発想で新規事業を

そうは言っても、生き残るためにやはり、何かを付け加えたいという思いは、どの経営者にもあります。新規事業がその代表選手ですが、このことは企業が生き残るためのイノベーションを図ることと通じています。

新規事業となると、つい今ある技術や資源から小金を儲ける発想をしがちな経営者が多いのですが、本来は経営者が抱いている大きな夢や理想を実現すべく、最初から大風呂敷で大きな構想を持つことが望ましいです。それでも現実の着地は意外とこじんまりとしたものになることが多いのです。皆が熾烈な競争をしているので、ある意味で当たり前のことです。

そんな中でも大きく発想するためのポイントは、

 

1.業界や業態をまたぎ、物事を「つなげる」ことです。

自社のみの資源で新しいことを発想するよりも、世の中に存在し利用できるものが周辺にないかを考える発想です。

違う言葉で言えば、構想の中で足りない機能などを認識し、これを他社の協力で補い連携することです。自社と他社を「つなげる」戦略を立て、連携する、ルールを作る、実行するというステップを踏むことになります。

簡単に出来ることから始めるのでなく、法螺でも良い、大風呂敷を拡げて小さくたためば良いくらいの発想を持って業界や業態を超えた「つながり」で大きくマーケットに影響を及ぼすプロジェクトとして頂きたいのです。業界の間、業際にビジネスがあるからです。

 

2.新しい事業は、既存のオペレーション構造とは全く違うことの認識を持つことです。

逆に、新しい事業を経営者が既存のオペレーション構造と同じ土俵で考えることは、最大の失敗につながります。

既存の延長線上の新規事業は既存のやり方を少し変えれば済むかもしれませんが、構想が大きくなればなるほど、違うオペレーション・インフラを発想しなければなりません。

それは自社の資源には無いかもしれません。このため他社の資源と「つなげる」ことの発想が必要かもしれません。

構想の大きな新規事業ほど、オペレーションの構成要素が一見似ていても、実は相当違うので自社にない資源を他の会社と手を組むことで補わなければならないことが多いのです。

 

3.試行錯誤の連続である覚悟をもって我慢することです。

構想が大きい場合、予期せぬいろいろな事態が発生します。それは戦略を大きく変えなければならない事態かもしれません。それは単なる変化のレベルでなく、構想自体の組み直しになるかもしれません。この事態を、事業構想を進化させ、より良い方向に向かうプロセスと考えたいものです。

このように事業創造には困難がありますが、臨機応変に変更を繰り返しトライしていくことです。構想を常に修正しながら進化させることです。壁の内側の論理でなく壁を越えた論理につながります。

壁を超えるには、現実にある社会的な課題、すなわち、少子化、高齢化、医療問題、環境問題、あるいは業界などの掟や商慣習を変更させる新しいルールを作ることなどになります。この場合、自社の力のみでなく友軍や連合軍で解決できないかの発想が望まれます。

ここに他社との連携を上手く継続できるかは、構想の良し悪しは勿論ですが、同時に、連携する企業群に「自分たちにも参加のメリットがる」と常に思わせ、特にキーとなる連合パートナーには絶対に不満を抱かせないことが肝要です。

 

4.また、きっかけを基にしたいろいろな試行の過程で、回収エンジンのことも考えなければなりません。

構想が大きくなると試行の連続です。何らかのきっかけで新たな試行に入り、実験することになりますが、私企業である以上、回収期間との勝負であることも忘れるわけにはいきません。このために厳格な回収計算を想定しなければなりません。

それでも私は、かねてより短期的な利益最大化や株主価値のみの最大化を目指し、早期の回収のみを念頭に置く経営は、結局企業の中期的発展のためにはマイナスな点が多いと考えています。私が主張する「農耕型企業風土づくり」を通じた経営の視点こそが、イノベーションを積極化でき中期的な発展をもたらすのに、逆説的ですが、近道だと確信しています。

金(カネ)中心の合理的な経営からは、リスクや時に大きな出費を伴うイノベーション的な発想は排除されることが多く、企業の成長のために次の大きな糧を得ることには遠くなると考えています。

むしろ非合理で人間中心の経営に視点を置くことこそ重要な発想の一つと考えています。今の経営が数字優先で短期的な回収計算を考えすぎ、組織を構成する働く人間に光をあてる傾向が弱くなっていることを、反省する機会だと思っています。

 

 

 

第188回 企業が生き残るために(2)

Posted on 2016-01-28

成功する企業の特色に関しての続きです。

 

4.規模の大小は別としても、マーケットのプラットフォームとしての役割機能を担った商品を持っています。

ここにプラットフォームとは、特定のユーザーや利用者集団を一つの利用環境にまとめて、それぞれの利用者が自己のマーケットを作り出せる、多面的な機能をもった製品やサービス群の仕組みです。

コンサルを依頼される企業の中でも、私はこのような経営センスを持った経営者なら指導し甲斐があり気合が入ります。

このためには何かに特化する視点が望ましいです。なんでも屋ではプラットフォームの発想になりにくいからです。しかも自分の得意とする分野に特化することです。隣の芝生の緑に気を乱されずこのプラットフォームを造り上げ、活用する参加者が最良の商品を出せる仕組みを提供することです。

このために、「今の状態で、3年先に自分の会社が生き残れるか?」を常にグループの長や社員に問い、考えさせ、利益をあげている今こそ労力と時間のかかるプラットフォームつくりに取り掛かることです。

 

5.常に変化への適応力を、組織として身に着けています。

昔も不確実な時代だったと思いますが、特に、今が政治や経済などの変わり目の時代だと、私は認識しています。

変わり目のシグナルを感知し、対応する能力こそが変化への適応力ですが、これをトップのみに委ねるのでなく、各部門毎にでも臨機応変に環境変化へ対応できる組織が肝心です。

レベル毎に鋭敏な情報アンテナと環境変化に対して、即動ける権限と力を与えられているのです。

6.「加える」ことにも増して「捨てる」能力を組織として持っています。

昨年の暮れ、ある会社の仕事納めの席で突然指名されました。急なことで準備がありませんでしたが、普段から会社が更に成長するために大切だと思っていたことが急に頭に浮かびました。「捨てる」努力についてです。

「私自身の経験でも「足すこと」に奔走して、次々に新企画やプロジェクトが出ないと満足できない頃がありましたが、ある時振り返って、足すことで、かえって中途半端に経営資源を浪費していることに気づきました。

それ以来、次期の事業計画策定の時期になると、何かを「引き算する」ことを常に考える習慣がつき今日に至っています。お蔭で企画やプロジェクトの切り口が鋭くなり、競合の追随を許さないケースが多くなったことを記憶しています。」と。

時代は変化しています。消費者がより賢くなってきています。

彼らは機能の多さにあまり魅力を感じていません。機能が多くなれば「高価の値付けが出来る」、「売れる」との企業側の論理など全く受け入れていません。日本は成熟した過剰社会で情報が氾濫している中で、情報におぼれそうで情報や商品や機能などすべてが過剰な社会です。

消費者は、過剰な中から魅力のないものを誰かが引き算してくれることを、本音では望んでいます。機能の多さよりその商品が自分をひきつける魅力を欲しているのです。

足し算で加えると商品が多くなったと勘違いして、何となく安心していた恥ずかしい時期が私にもありました。

私の年代ですと、多いことが豊かさの象徴でしたので、よもや引き算の発想が出にくかったのです。特に、予算や計画の達成が危うくなると、短期的に売り上げが欲しく新しい商品を出すクセがありました。このことが結果としてこれまでの商品開発コンセプトや商品のラインアップ体系を崩すことにつながり、自分で自分の商品を喰ってしまうリスクを冒していたのです。

「顧客は神様です。」とすべての顧客に対応する努力をして、かえって全体のコスト高、サービス不足に陥ってしまいました。顧客が抱く会社の良いイメージを混乱させることにもつながっていました。

考えてみると、我々は失うことに恐怖を覚え、他方、すでに持っているものに対する価値を比較的に高く評価する傾向があるようです。これが、「捨てる」ことが出来ない理由の一つです。ビジネスでこれを回避するには、今ある既存の商品に対して、これから事業を始めるとしたら、もう一度この事業や商品を自分が経営する価値があるかを問う勇気がないのが普通であることを、悟るのに私自身も少し時間がかかりました。

このような体験を踏まえながら、「引き算をする」ことをなんとか学んだのです。

ある段階から、顧客への情報を、出しすぎないように努力をしました。自社の強みを、これでもかと書き並べた会社の商品案内に、顧客が魅力を感じないと分かった時です。

むしろ、会社の強みの背景となる「企業風土」や「企業文化」に関する情報を積極的に出すことに専念しました。

また、核となる商品に投資を集中し、事業にメリハリをつけることを考えました。厨房(作る所)の中は徹底して効率化するが、顧客との接点のサービス提供部分では、非効率でも人間の対応を旨とするとの方針を貫いていきました。効率化する部分と非効率でも手間をかけ人間味や暖かさを出すことに心をたかったからです。

加えて、横に単純に拡げる水平平面作戦でなく、深堀する垂直作戦で成長することを敢えて考える努力をしました、顧客の数でなく顧客との絆・接点の強化、顧客との関係性や、総合でなく専門性などに配慮することで、少しでも「捨てる」ことにつなげ、会社を成長路線の乗せることが出来ました。

 

 

第187回 企業が生き残るために(1)

Posted on 2016-01-21

正月、家族からプレゼントされた『植物は「知性」をもっている』という面白い本を読みました。植物には競争する植物と競争しない植物がいることが紹介されており、植物社会が人間社会よりある意味で進んでいることを知り驚きました(本件については追って採りあげるかもしれません)。

ところが、我々が生活しているビジネス社会では、残念ながらこうならないのが常です。ほとんどの私企業は競争関係の中で生きています。何とか「生き残る」こと、しかも「成長して生き残る」ことを考えるのが一般的です。

 

成功する企業の特徴

この競争社会で生き残っている成功企業を見ると、いろいろな特徴があります。

私が過去に経営を託されていた会社でも、多かれ少なかれ以下に述べる特徴を持ち合わせていました。まずこれらの特徴をしっかり把握することが、皆様が関係する会社の次の成長に役立つと思い、本年最初にこのテーマを数回に分けて取り上げます。

 

1.個人のみで創造性を高めようとしないで、グループや集団の力を結集して創造性を高めています。

工場勤務、事務所勤務などの勤務環境を問わず、ほとんどのビジネスマンはある種の知的な労働をしています。知的な仕事をしているこれらの人々の努力を、どう特定の方向のエネルギーに結集できるかが、企業の発展にとり肝心なことは異論がないと思います。

そのためには、コミュニケーションを良くしやすい環境が最低限重要なことです。物理的環境、仕事を受け渡しやすい環境、人間関係の環境、自由に発想できる環境、チャレンジしやすい環境などです。

かつて私はトップ営業の機会に或る金融機関の頭取の部屋に案内されましたが、その時の印象を今思い出しました。大きな部屋に応接と執務の机が無機質にあるのみで、その環境は全く孤独で、創造性とはほど遠い印象を受けました。この環境は人を圧する権力を誇示することはできたとしても、ここで創造性を発揮する仕事はまず無理だと感じました。

適度な大きさの部屋で、皆が侃々諤々議論できる物理的な環境や、人間関係の良さが企業の成長には必要だと常に思っています。個人の力のみならず、集団の力を結集すべく、コミュニケーションがとりやすい環境づくりが、成長の第一条件です。

 

2.小グル-プを単位として権限を持たせて仕事を進めています。

大きな集団では、変化にマッチした新しいことが生まれにくいのが一般的です。自分が商店主の意識こそが一番創造力を生み出します。小さな集団では、意思決定権を分散でき、組織の機動力を高め成長力を高めることにつながるからです。

私もこの発想で伝統的なピラミッドの組織構造を廃止し、小さなグループを沢山作りました。グループ長と名付けた層に現場の全権を与え、決定権を委ねることで、知恵を働かす習慣が彼らにある時期から出てきました。一般社員にも責任と自由度を大きく与えることにしました。

この発想には対抗勢力が当然反対も出てきました。

既存の権力構造の上にいた幹部や社員です。しかし、彼らも胡坐をかいて権力を誇示するのが精いっぱいで、新機軸を打ち立てる力や余裕はありません。片や、責任と自由度を与えられた層からは、新しい製品、商品を企画できる力、競合と一線を画す商品を打ち出すパワーが湧いてきました。まさに実績で勝負があったことが証明されました。

 

3.折れ線グラフ的に一気に大きく飛躍しています。

毎年少しずつ成長している会社は、普通の企業です。

私がコンサルタントをしている或る会社の社長も、「これだけ成長した」ことを誇りにしている人がいますが、私には不満です。私の経営尺度からすると、全く成長不十分です。

マーケットに影響を及ぼすには、一気に成長することが必要です。従前の倍々位のスピードでのスケールアップするくらいの勢いが不可欠です。特に、コンピューターでの処理能力が破壊的なスピードで成長し、インターネット接続環境が様変わりになってきたこと、そこからの得る沢山の情報を利用できる環境、新技術が距離を益々短くしていること等の現実からしても、倍々の成長スピードが実現できるチャンスがあることをお分かり頂けると思います。エネルギーを貯え、折れ線グラフ的に一気に成長出来るチャンスがあります。

勿論この成長過程で資金や労働力などの不足が生じてくることもありますが、それはリーダーの仕事です。アンバランスを埋めるためにリーダーが担うべき戦略策定の仕事が動き出すことになるのです。

 

 

継続的に伸びる会社は何が違うと思いますか?

Posted on 2012-10-11

 私が経営にとって重要なポイントと日頃考えるところがあります。

 「これからの課長の仕事」、「これからの社長の仕事」(ネットスクール出版)の中で「農耕型企業風土」づくりで会社を成長させるための「フォーミュラ」について述べ、そこでポイントを説明しましたが、今回は継続的に伸びる会社のポイントを違う側面から言及します。

チームの中で活きる個々人の能力アップ

 第一に、社員一人一人が自主性と能力を持ち、それぞれが機関車の機能を全うできることです。個々の社員がエンジンを持ち、部隊を引っ張っていける能力を持つことです。

 その為には、詳細は前述の本に譲りますが、個人の能力をチームとして発揮できるようにする「企業風土」づくりが必要です。

スピードある行動力の維持

 第二に、組織風土としての駆動力、行動力が必要です。環境、技術革新やマーケットの変化への、企業の迅速な対応力と言ってもよいかもしれません。

 経営戦略を描くことも肝要なことですが、オペレーション上齟齬がなく実行(行動)できるということが担保されない限り、利用者への訴求力は弱まります。企画が実行された段階ではじめて様々な顧客のリアクションが出てくるからです。

 時に、企画自体の変更や、サービスプロセスの高いレベルの変更を余儀なくさせることになるかもしれません。スピードをもった行動力で変化対応する柔軟な組織風土が企業を救うことにつながるのです。

特色ある仕組みをプラットフォーム化

 第三に、すばらしい特色ある「仕組み」をつくることです。システムも含めたいろいろな仕掛けを仕組みにすることです。

 自社のサービス商品提供のためこの仕組みを最初につくるとしても、ゆくゆくは自社以外の他社を含めて共同で利用できるプラットフォームにすると、更に会社の持続的な発展につながる考え方もあります。小さい会社にとっては非常に難しいことですが、第三者が魅力を感じるほどの仕組みやプラットフォームでない限り、その会社の差異化につながらないという意味で難しいことなのです。

 その仕組みには通常経営理念やノウハウを具現化する自社の企業風土を映したノウハウや特色が鮮明にでてくるはずです。手の内を開示するわけですから、ここで自社のノウハウをオープンにして第三者の共同利用に供するか否かの経営判断の岐路に立ちます。したがって、自社の企業風土やノウハウを背景としたプラットフォーム(仕組み)を共同の利用に供する判断は、相当な自信がないとできない相談で、そう簡単ではありません。

 要は、それぐらい素晴らしい仕組みでない限りその企業の持続的成長を支えることができないので、「仕組み」に大きな特色をだすことが重要です。

「個」より「全体」を売るサービスのデザイン

 第四は、サービスのデザインを設計し、商・製品をその中のサービスの一部としてとらえるべきことです。デザインの中にサービス重視の考え方を活かすことです。

 企業が売りたい商・製品を押し付けがましく店に並べるのでなく、顧客がその商・製品を手に取り、自分の生活空間の中での利用シーンを思い浮かべるような、利用シーンの各フェーズで利用者の願望や要望をどうサービスのデザインの中でどのように実現していくかを念頭に置いたサービス・デザインにすべきです。

 こうするとサービス導線全体の中で、その商・製品の持つ個の価値より、さらに付加価値のついた全体を利用者に提供できるものになります。すなわち、経営の中に需要側のデマンド・オリエンテッドの視点を積極的に取り込むことにつながります。

 iPodなどは、楽曲、店舗、第三者のアプリ、電子書籍などのサービス全体をデザインすることで単なる単体商品より、全体として付加価値の高いサービス商品を利用者に提供することを、初めから戦略として狙っていたかもしれません。