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折々の言葉 / 時代認識

第196回 今の時代をどう見るか(1)

Posted on 2016-03-31

 今の時代をどう見るかは大変難しいです。とりわけどこの視点から今の時代を捉えるかによって、時代が様々な映り方をするからです。個人的には、今、(1)資本主義が変容を余儀なくされている。(2)世界の主要国が古い帝国主義的傾向と新しい帝国主義的傾向を混在させている危険な時代である、と考えます。この中で、我々は日本国民がどう生き延びるかの知恵を捜さなければならない。この視点で時代を捉えてみます。

 

 1.資本主義の本質

 昔、マルクスの『資本論』の読破にトライしましたが、難解で内容を本当に把握したかは疑問な所もあります。その中で今も頭の隅に残っていることは、資本主義が行き着くところ、すなわち、国家が全く市場の干渉をしない純粋な資本主義の本質が説かれていたことです。

 この本質から見て時代がどう映るかの点に着眼します。

 

資本主義の萌芽

 マルクスが資本主義の本質について主張しているのは、

 第一に、「労働力の商品化」です。

 主張の良し悪しの判断は別として、労働力の商品化が成立するためには、当時のヨーロッパの農民の暮らしにおいて、彼らを身分や土地の束縛から解放し、どこでも自由に移動でき、土地と生産手段からの自由の確保をすることが前提となります。これは国家が土地などを所有する一部の国ではできない相談ですが、世界中の自由主義圏では昔も今も可能なことです。

 資本主義の萌芽は15~16世紀に、まずイギリスで起きたのはご存じの通りです。学校で学んだ「囲い込み(enclosure)」が契機です。

 理論的にイギリスから起きる必然性があったか否かは不明ですが、この頃地球が寒冷期となり、誰もが毛織物が欲しかったことで、その需要が旺盛となりました。この需要に応えるために領主や地主が農民を追い出し、沢山の羊を飼うため、領地の周囲を生垣や塀で囲い込んで(enclosure)牧場を作りました。結果、追い出された農民は、土地から解放され、都市に移動し毛織物等工場で雇用されるという皮肉なことになる。これが資本主義の萌芽の背景の一つです。

 第二に、対価を賃金で払うことです。

 労働力という商品を提供した以上、その対価をもらわなければなりません。対価は賃金と呼ばれ、この賃金は再生産に必要な額のみとしたことです。本人の体力の維持のための、あるいは家族を維持するため必要最小限の金額です。すなわち賃金は、再生産力を維持できるギリギリのための額となるという趣旨が『資本論』に書かれていました。しかも、地代としてではなく労働力の対価として賃金で払うというものです。

 この二つの主張を現時点で見ると、この傾向が今、ますます鋭敏化しています。人材を商品とみる、代替可能とみる傾向が強いこと、再生産可能なギリギリの賃金での生活を資本が雇用に強いていること、これら二つの資本主義の本質は今も貫かれています。

 過去から現代に至るまでに、底辺の本質部分は変わらずとも、上層部分の在り様が大きな変容を遂げてきているとみます。

 

2.資本主義の本質的内容が貫かれつつも、変質している時代と見ます

 ところが、「囲い込み(enclosure)」のみでは、資本主義は力不足です。我々が学んだ産業革命と同期を取らなければなりませんでした。資本主義への道を耕すには、技術革新による新しい機械で大量生産ができる因子が働く必要がありました。産業革命です。

 資本主義は、以下に整理するように変容を遂げて生き延びていることが分かります。

 (1)萌芽期、(2)重商主義の時代、(3)植民地主義の時代、(4)独占資本主義の時代、(5)旧い帝国主義の時代、(6)新自由主義の時代、そして(7)新たな帝国主義の時代、そして(8)今の時代、と変容を遂げてきています。

 

 

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