


折々の言葉
信頼される人間になる
先日、私も少し関係している「ジョン万次郎に学ぶ会」の代表をされている吉田礼三様から、おそらくこの本が舩井氏の遺作になったのではないかとの一言を添えて、本をいただきました。舩井幸雄氏の『未来の言霊』(徳間書店)です。
タイトルに興味を覚えてこの本を読んでいたら、たまたま面白い部分に行き当たりました。人間の信頼に関しての記載部分です。
私が最近書いた本で述べていることとほとんど同じ内容を述べられていましたので、以下、多少長いですが引用させていただきます。
人の信頼を得るためには、まず信頼に足る人間であることから出発しなければなりません。しかし、信頼というのは相手次第ですから、相手に信頼されようなどという気持ちは捨てて、確固たる自分を作り上げることから始めたいものです。
まず、だいたい35才までの若い世代は「信頼されるクセをつけること」を目標にします。そのために必要なのは、
約束をまもること。
学び好き、働き好き、素直であること。
論理的、現実的であること。
不平や不満を言わずプラス発想型であること。
居所がはっきりしていること、の5つを守ることです。
若いころのライフスタイルは一生を支配しますから、この期間は極めて大事です。35才以降の壮年期になりますと、「信頼される行動を取ること」が目標となります。
この前の段階をキチンと過ごせば、かなりの信頼感を得ているはずです。しかし、信頼とは築くのがむずかしく、壊すのは簡単です。そこで、
逃げない、言い訳をしない
どんなことにも前向きに誠心誠意やる
損得より善なる行動を取る
自信を持つ
他人の欠点を指摘したり、悪口を言ってはいけない
ということなどを念頭に置く必要があります。
そうして55才以降となると、いよいよ人間として総仕上げの時期です。この時期のテーマは「信頼される人間になること」です。
誰もが納得する哲学を持つ(特にどんなものでも大事にする)
他人の足を引っ張らない
「我」よりも「公」を大事にする
謙虚であり、出処進退がきれいである
与え好きである
というのがポイントです。
こうして、信頼される人間になるよう努力をつづけていますと、苦境に陥ることも少なくなりますし、仮に陥っても、人が助けてくれるようになるものです。
こうして、与え好きで、与えグセのある人間になっていくことが、世のため、人のために貢献したいという思いをより強く持つことにつながると思います。
与えるものが、受け取るもの。
以下省略。
以上が舩井氏の本からの引用です。
私が最近出した本、「礼節と誠実は最強のリーダーシップです。」を読まれる方が、少しでも内容の理解を深めるためにと思い、参考までに引用させていただきました。
組み合わせによる切り口とプレゼンテーションでの留意
最近ある方から、会社の中で新しい独立した事業を立ち上げる計画を伺いました。彼女の長年の経験とノウハウを活かして立ち上げるその事業、是非成功してもらいたいものです。出版で言語教育の分野に進出する由。話の成り行きから私にコメントを求められたので、新しい切り口をアドバイスしました。競争の激しいこの分野、「切り口に新鮮さが必要です。」と。
私も若い頃に外国人とビジネスをする必要がありました。その時の経験から、「決してきれいな英語を話す必要はないです。むしろ、つたなくとも、話す内容、プレゼンテーションの方法などがビジネス上重要で、新しく立ち上げる事業の切り口をとがらすために、何かの組み合わせを考えられたらどうですか?その方がビジネスマンにとってうんと役立ちます。」と、日頃思っていることを率直にアドバイスしました。
この場合、語学とプレゼンテーションの組み合わせとなります。あくまで道具としての英語教育を推進する企画で、新しい切り口となるかもしれません。英語を学びながら、プレゼンテーション力を高めるというビジネスでの実務的な手法も学ぶことになり、一石二鳥になると、勝手に考えています。
ここで本題のプレゼンテーションの課題に戻ります。
私も戦略や方針を社員に説明するにあたり、体験を通じて効果的なプレゼンテーションについて学びました。どうしても独りよがりの説明になりやすく、しかも聞く相手の人が「理解してくれて当然」という発想から出発していたことを反省しています。この体験と反省から、最近では、次のようにアドバイスをしています。
1.プレゼンテーションする本人が構図の核を鮮明に描き、本心でそう考えていることが大前提です。
まず話すことの全体の、構図、すなわち、スケルトンが鮮明になっていなければなりません。話す内容の重みが違います。
また、他人の言葉の受け売りでは無理です。心に刺さりません。プレゼンテーションの内容の出所は別なところにあったとしても、本人が本心でその内容に賛同して、本人もそう考えていることがまずもって不可欠です。
2.話すテーマを最大限2~3つに限定する。
人間の記憶には限界があります。
特に興味を覚えてもらい、記憶にとどめてもらうには、それくらいが限界です。ところが、話す側は言いたいことをすべて言いたいとの思いから、どうしてもテーマが多くなりがちです。盛り沢山の話題では、かえって焦点がぼけてしまいます。
3.短い言葉、しかも相手にインパクトを与える言葉を使うことです。
1987年、私も会社を建て直すために今後の戦略的取り組みを「六つの約束」として社員の前に呈示しました。
この第一番目が「5年以内の上場」。短いフレーズで、インパクトもありました。
今の時代と違って、この頃は上場会社で働くことが一種の社会的ステータスにつながっており、社員にとって大きなメリットがありました。会社としても、社会的認知を得ること、人材の確保、資金需要対応ができるとして、当時はメリットがありました。
4.相手に分かりやすい言葉を使う。
専門用語は使わないことに努力をしていました。それでも、カタカナ用語が多いと批判を浴びたほどです。なるべく平易な分かりやすい言葉を使うのが鉄則。知識を鼻にかける人や、見下される危険を感じる人は、それを隠そうとして専門用語を多用する傾向があります。相手に伝わってナンボの世界であることを忘れてはなりません。
5.目をあわせ反応をみる。
沢山の聴衆の前でのプレゼンテーションは、時に困りものです。目の焦点を合わせる機会が少ないからです。
しかし、話していくうちに、自分の話を真剣に聞こうとする人を聴衆の中から見つけることができます。このような人と時々目を合わせて双方向性の雰囲気を自ら演出するのです。聴く人の興味度を測るのと、自分自身のモーチベションを上げるためでもあります。
6.最後のまとめをする。
聴く人のなかには、最初に聞いたことと、最後の話がどうつながるかに迷っている人もいます。
そこで、そもそも今日の話の主題はなんだったのかを相手の立場からまとめてあげることで、聞く人の頭が整理され、結果として、あなたの話が通じ易いのです。
以上のことは、日本語だから、英語だからといった言語の違いを問いません。相手によってジェスチャーを入れる等のボディーランゲージに少し違いがあったとしても、以上の留意点を踏まえれば、本質的にはプレゼンテーションで大きな失敗をすることにはなりません。
今回は、たまたまある人の新規事業の話を聴きましたので彼女にアドアイスしたことを思い出して、プレゼンテーションにあたっての留意を述べました。
「加算すること」と、「時に、引き算をすること」
本へのコメント
先週書店に出た私の本、『礼節と誠実は最強のリーダーシップです。』に関して、フェイスブックなどを通じて、皆様から沢山激励の言葉をいただきました。本当にありがとうございます。
この本の項34、「捨てること捨てないことの判断軸」を中島大希君が引用して、コメントをしてくれたことを思い起こして、今回は少し違う角度からこのことに関連したテーマについて述べてみます。
「捨てること」、「捨てないこと」の判断にいろいろ悩んでいる方々、このコラムが多少の参考になれば幸いです。
艱難辛苦
「人の一生は、重きを背負うて遠き路を行くが如し。急ぐべからず」。この言葉は、徳川家康公の遺訓第一条にあると言われます。苦しみや辛いことを耐えて乗り越え自ら解決することではじめて人生の楽しみがあると、私は解釈しています。
この通りだとすると、生まれて老いて死にいたるまで、病をはじめとして苦しみの連続で、沢山の逆境に遭遇するのは普通のこと。艱難辛苦の連続です。皆、この苦境をどう乗り越えるかに算段し、努力しているのが現実です。人は一見順風満帆そうに見えても、いろいろな逆境を乗り越えその後の楽しみを全身で感じたいと、皆、毎日を一生懸命生きているのではないでしょうか。
足し算と引き算の年代
こうだとすると、逆境があるのが当たり前。
生まれた時はゼロの状態で、そこから人生の中で一つずつ何かを加算。このことから、我々は足し算に慣れ過ぎているかもしれません。ところが、足し算をし続けていきながらも、何かの苦難に遭遇して加算できないことが、常に発生します。そのような時でも私の年齢になると、生まれた時の状態の戻ると思えば、すべて気が楽です。引き算が重要になることにやっと気づくからです。30代、40代で働き盛りの頃とは違い、60代、70代になってやっと引き算、捨てることの意義に気づく人も多いと思います。否、取捨選択の言葉があるとおり、このことがいつの年代でも重要なのに、それを忘れていたことにこの年代で初めて気づくからかもしれません。「得ること」に忙しすぎて、引き算のことをすっかり忘れていたのです。
常に足し算で計算するから足すことに苦心惨憺し、足すものが無くなり何かが減ってくるとそれを心配し、ある種の逆境に感じることが多かったのにやっと気づきます。
私もこれまでに、いわゆる逆境に沢山遭遇しました。例えば、親会社のあるリーダーとの確執、第三者割り当て増資の苦渋の決断、ファンドの株主利益優先主義に対する戦略の違いからくる軋轢とファンド側でのいろいろな工作への対応等、心を痛めることが沢山ありました。足し算の計算に狂いが出てきたからです。未だ開示できないことが多いのですが、半沢直樹よりも凄いストーリーになるものばかりです。もちろん、ここにのべた事以外にも、同じような逆境を沢山体験しました。
加算すべきことの一番目
私と同様な、または更に過酷な逆境体験をされた方々がいるかもしれません。そこまででなくとも予期せぬ左遷、降格等はほとんどの人が経験され、ビジネスマンとしての悩みに直面しているかと思いますが、これも考え次第です。
ビジネスマンにとって、信用、信頼を加算してこそ成功であるという考えを持つ限り、一生を長い目で見ると、ポストダウンや左遷など本来大したことではありません。加算すべきことの範疇には入りにくいことのレベルです。
仮に、信用と引き換えにそのポストを手にいれたとしたら、心の底では忸怩たる思いが一生残るでしょう。信用、信頼さえあれば天は助けてくれます。これこそ「加算すべきこと」の一番目だと考えます。お天道さんは良く見ています。人生を泳ぐ術には長けていない人がいるかもしれませんが、安心してください。信用や信頼を大事にする人には、いつか天が恵みを注いでくれます。
また、他人のせいにしない心を持ってください。むしろ、逆境の原因は自分にある、もしくは「引き算すること」を思い起こし、逆境など初めからなかったのだと思う懐の深い心の働き方に努力することも必要となります。人の心は、どうしても個別の部分面にとらわれ易いので、その事象が全てと思いやすい。このような時には、ある事象のみが目立ち、視野が狭くなっているかもしれません。このことその事象のみで自分自身で自らの動きを制約しているかもしれません。一旦、心の深呼吸をして、気分転換をして心を大きく開いてください。自らの心を自由にして発想、行動してみてください。
「得ること」の固定的観念を取り払い過去のことに拘泥せず、将来に向かって今を精一杯前に向いて生きる。むしろ、将来の夢を語るような機会を持ってください。過去への執着を捨てれば、苦境と自らが思う畑の中に花を咲かせる余裕も生まれるかもしれません。今を一生懸命生きることを考えるようになります。
ビジネスマンの仕事上の「礼節」に関する本の出版
『礼節と誠実は最強のリーダーシップです。』というタイトルの本を株式会社クロスメディア・パブリッシングから出版しました。全国の本屋さんなどで本日から販売されています。
ビジネスマンが直面する仕事と人間関係の問題。これを礼節と誠実さの視点から取り上げた、リーダーのマネジメント参考書となるものと考えています。日々マネジメントに努力されているミドルのリーダー層がこれを読み、更に元気づけられる本です。
執筆した趣旨を明確にするために、この本の巻末、「おわりに」を引用します。
本書では、「礼節」、「誠実さ」を、横軸と縦軸の関係で取り上げました。私自身がいろいろな失敗や成功体験から習得した知恵と人生の恩師から学んだことがもとになっています。ミドルマネジメントのリーダーが日常的に直面するもろもろの業務や事象を横軸にして、「礼節」と「誠実さ」をもった対応方法の具体例を縦軸に示し、この交錯するところでビジネスマンとして望ましいリーダーシップをテーマごとに浮き上がらせました。
ミドルマネジメントの任にあるリーダーのみなさん、「礼節」と「誠実さ」をもとにした人間関係を着実に築くことで、人望、信用というビジネスマンにとって最大の財産を手に入れてください。単なるハウツー的な手法やテクニックでなく、人間としてまっとうに生きるには何が必要かを学び、誰からも評価される魅力的なリーダーになってください。皆さんの人生、ビジネスマンとしての実績につながっていきます。
残念ながら、現在、「礼節」や「誠実さ」をもとにした人間関係が少し軽んじられていることを、私は危惧しています。合理性と効率を前面に出した経営手法に追いやられすぎて、組織内外の人間の関係性も乾ききってしまい、かえって経営全体の効率を下げていると思います。ある因縁で一緒に仕事をすることになった部下の幸せのために、礼節をもって誠実に一生懸命経営していかなければならない、というこだわりを私は持っています。上司たるリーダーが少しでも周囲の人に礼節と誠実さの模範を示すことが、人材の育成と成長に役立ち、会社に付加価値をもたらしてくれるものと考えています。
2013年の年末頃、ある人からクロスメディア・パブリッシングの小早川社長を紹介していただきました。ビジネスマンの「礼節」と「誠実さ」をもとにした人間関係とリーダーシップに焦点を当てた本の企画を熱く語る小早川社長に接し、常日頃「昔、あの場面で、ミドルマネジメントのA君が礼節を重んじ、こう誠実に行動しくれていたならなあ」といった思いを持っていた私は、正月から数か月で一気に書き終えました。
今回、この本を著すにあたり、手許にある「折々の記」(ベルシステム24の経営について内外で行った私の講演、講話などの記録)や、数年前に書いた『これからの課長の仕事』、『これからの社長の仕事』(ネットスクール出版)などを参照し、ヒントにしました。
2014月5月 木々が芽吹き、新緑の若葉を愛でる楽しみを味わいながら 園山征夫
以上が本の巻末からの抜粋ですが、ビジネスマンがリーダーシップを発揮するにあたって、「礼節」と「誠実さ」のあるマインドと行動が、これまで以上に必要とされるものと考えています。ご参考になれば幸いです。
与え続ける
「Give & Take」という言葉があります。「与え、与えられる」関係です。
この言葉、一見、フェアに聞こえます。響きが何となく良いです。しかし、私の20年の経営体験からすると、これは意外に「計算ずく」のフェアさだけのことが多いように思います。この場合、「Give & Take」の結果として何かを成し遂げても、嬉しい実感が本心から湧かないことが多いのです。「与えられる」ので「与える」という打算が働き、本心の動きが感じられないことが多いからです。むしろ、現実には、「Give & Give」で与え続けることの方がビジネス上のメリットが大きいと、私はずっと感じてきました。しかも、これを意識していないで「与え続ける」のです。その方が結果として、周囲からの「信頼」、「信用」という、ビジネスマンとして最高の物を勝ち取る機会が多くなると考えます。ビジネスで成功している人には、これが多くみられるのではないかと思います。
何故でしょうか?
第一に、与え続ける人は、チームワークの中でお互いに助け合い頼り合うことの重要性を熟知しているからです。ゴリゴリ自分を押し出すと、全体のチームバランスを崩すリスクにつながります。私も、自分だけが前に出ても、全体を大きく構築するには限界があることを知りました。与えることで助け合うことが、かえってチームを強固にし、全体の成果を大きくする力があると考えます。論理でなく道理の世界です。
第二に、与えることは、任せることと一脈通じます。与え続けるので、与えられた人は、与えられたものを利用して何か仕事をする、任されて仕事をすることになることが多いのです。与えること、すなわち、任せたことで、部下が育つ機会を作ることのなるわけです。育った部下からの感謝も含めて、その部下の以前より高いレベルの力を借りて、部門全体が大きくなることにつながります。自分個人の利益より全体の利益を大きくして、その中から大きな分配をもらうことにつながります。
第三に、与え続ける人はいろいろな関係性(Relationship)をつくるからです。関係はごく限られた人のみでなく、与えられた沢山の人に及ぶのです。この関係がどこからどう自分の成果に結びつくかは本人にも分からない。本人もギラギラしたマインドが無いことが、かえって、集まる人々に安心感を与え、その人たちからの信頼をうることになります。結果として、人間関係づくりの基本をわきまえている人と見られるからです。
皆様もご存じのとおり、16世紀末、日本の統一の過程で毛利軍と織田軍が熾烈な戦を展開しました。好き嫌いは別として、この双方、毛利元就、織田信長とも「与え続ける」こととは全く逆の「Take & Take」型だったかもしれません。他方、安芸の毛利軍に常に攻められ続け、最後は有名な武将の山中鹿之助をもってしても一族再興ならず、毛利軍に滅ぼされたわが故郷、出雲の月山富田城の城主の尼子義久は、どちらかと言えば「Give & Take」型だったかもしれないと思います。こと戦となると、取った、取られたという土地支配力がモノを言ったので、そうならざるを得なかったのかもしれませんが、ビジネスの世界では、最後の決め手は「信用」や「信頼」支配がモノを言うとなると、「与え続ける」ことこそが、一番効いてくると考えます。
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