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折々の言葉

ソーシャルメディアの使い方

Posted on 2013-09-19

 情報の流通は社内外ともブロックできにくい状況にあるのが現実です。このことを背景にすると、社員のソーシャルメデイアの活用についても今後様々なことを考えざるを得ないと思います。社員が外に向かって発信する内容についてのガイドとなるある程度の基準を作ることは一つの解決策として、ほとんどの企業がルールは作っているはずです。

 

発信情報の歪みの原因

 しかし、社員が発信する内容は根本的には社員が会社からどういう扱いを受けているのかと連動します。社員が会社の方針に反対であってもその意見を正当に主張できる「場」さえあれば、彼らが外に向かって情報を歪めて発信することはあまり無いのではないかと思います。この「場」と環境さえあれば、甘えの部分がいつかは反省されるはずです。

 ソーシャルメディアの活用で最近思い当るところがあります。私の友人の例からのヒントです。発信人が歪んだ形で情報を発信した場合の対応をどうするかでした。そのサイトの場で議論を展開するより、ホットな状態が過ぎ去るのを暫く待つ方が得策です。ホットになっている状態では、どんなに建設的な意見でも相手に素直に伝わりません。曲解されて受け取られ、かえってややこしくなります。よほどの悪意に満ちたものでない限り、個人の意見を外に向かって発信する自由を妨害することの方がかえって問題を大きくするものです。「我慢一筋だった」と友人が話していたのを記憶しています。

 

コミュニケーションと肌合い

 ところで、最近思い当たることがあります。

 これまで、マーケット全体に大きな影響を及ぼしそうな人、いわゆるインフルエンサーを発掘してその力を有効に使うことに力点をおいていたことが自分の経験でもありました。このやり方が今もある程度有効とは思います。

 ところがFacebookの活用などを体験してみると、書き込みや「いいね」の私への反応は、私との精神的な肌合いの近さが大きな影響を及ぼしているのではないかと思うようになりました。この人達は一気に大きなグループにはなりませんが、肌合いのある親しい友達の小さい、しかし、確実なグループになり、その影響力に注視すべきではないかと考えるにいたりました。こういう視点で私も発信情報のコンテンツを書いています。

 そのような人の数を一度数えてみてください。グループは小さい集団です。私の場合、コミュニケーションする相手の数は多い時で70人。だいたい30~50人以内です。この中で頻繁にコミュニケーションする相手は20人以内です。

 冒頭に述べたように私をインフルエンサーとみなして、何か特別な意図を持って私に間接的要求をしていると思われる人もいます。私は相手に押し付けるような方法はSNSの世界でも好まれないと思いますので、間接的にそのような依頼があっても私は応じることはありません。そんなことをするとむしろ妨害的になります。 SNSへの書き込みも同一な肌合いの人々との社会的な「絆」を深めるためと考えていますので、一方的に自分の考え方や主張を押し付けるようなことはしていません。

 コミュニケーションの相手が「園山征夫のビジネスコラム」での主張のコンテンツをシェアしてもらう以上に、そこから発展する仲間の会話を楽しむぐらいに軽く考えてこのコラムを続けています。押し付けがましい内容ではなく、いろいろな人に役立ちそうな情報を提供して共有してもらうという姿勢でやっています。過去の経営経験から参加者に関係ありそうな情報と思える内容を提供したり、内容に共感する人々の会話のやり取りを助けたりしています。

 私の経験では、「いいね」のクチコミが広がるコンテンツは、グループにとって有益な情報ではなさそうです。参加者の感情のどこかを刺激するものです。この視点を忘れて、自分で勝手に有益と考えて発信した情報は意外にシェアされない経験があるのは感情の部分への頓着を忘れているからではないかと思うことがあります。

 

企業風土こそ重要との海外での主張(2)

Posted on 2013-09-12

前号の続きです。

 

何をどうすれば良いか?

内容に賛同されたら、そのような企業風土をどう作れば良いのかとの疑問がわくのが当然です。私の場合は全体を体系化して、それを人間で言えば骨格の部分と内臓に相当する部分に分けて、「農耕型企業風土づくり」の方法とステップを明示しました。現場を巻き込みこれを一体として取り組まなければなりませんが、ここで『一緒に仕事をしてよかった』からの内容を紹介します。

 

社員が支持する強い企業文化

この本の中で、社員が支持する強い企業文化を気づくには、以下の7点が必要であると記載されています。

1.危機を定義する。

  リーダーはミッションを明確に定義し、そこに危機感を吹き込まなければならないとしています。

これは私の体験から実に重要な点だと思っています。特に私が任された会社は実質倒産状態でしたから、一生懸命会社の将来の方向性を考え、皆にミッションを与え、そのミッションを皆で達成しなければ会社の存在自体が確実に危うくなる危機を定義し、説明していましたが、彼らの主張とピッタリです。

 

2.顧客に焦点をあわせる。

  社員がその時点で正しい決断をし、自主的に動くには顧客に焦点をあわせることとしています。

この点も私の経営体験と全体体系図どおりです。会社の施策や組織を顧客に焦点を与えたものに徹底し、現場に権限を持たせて現場の社員が自主性を持って動ける環境が大切です。

 

3.俊敏になる。

  変化への対応力が高いこと、将来を見据えてマネジャーは動くことと主張しています。

私の場合、最初はなかったのですが、経営していた途中で気づいたことがありました。「あなたの会社の企業風土は?」と採用などのときに聞かれることが多かったのです。そこで、社員が皆同様な内容を答えるようにと、それまでいろいろな方針説明で説いていたことを整理しました。企業風土としては「SOSFCCQ」と整理しました。このうちのSは俊敏性のSpeedで、もう一つがSimpleでした。ものごと、100%はわからないが、動くべき時に動くという企業風土を目指してこれを構築していきました。

 

4.すべてを共有する。

  厳しい事実でも社員に伝え、議論することで信頼関係が育ち、開かれた企業文化が築かれますと説明されています。

私は、「価値の共有」という表現をしています。情報は基本的に全て開示し、判断にいたるプロセスも開示する方針を貫いていました。秘密主義から良い企業風土は生まれないとの確たる信念があったからです。

 

5.部下の才能を見出す。

  マネージャーは社員を真のパートナーとして扱い彼らに成長の機会を与える。

社員をどう育成するかです。場を与え機会を与え経験をさせる。そのための方向性のガイドラインを与え、その範囲内で自由闊達にマネジメントする機会をマネジャーに与えることで、社員の隠された才能も開花し、早く育つのを見てきました。

 

6.互いに応援し合う。

  同僚同士がお礼を言い合うことで団結心と正しい行動を実践する一途さが育まれるとしています。

私は、いい仕事をするには、より良い人間関係が決め手だと思っています。これに気づくには、チームの中で自分の主張をしながらも全体最適に自分がどう振る舞うべきかを自ずと学ぶことです。「対話」の重要性も強調しています。

 

7.責任を明確化する。

  社員が目標を達成するには、責任と手段、成功した時の見返りを与えるとしています。

何をしたらどうなるかについて、出たとこ勝負でなくあらかじめ約束事として皆に明示することにしていました。特に皆で稼いだ利益の分配については、ある段階からあらかじめ分配ルールを決め、社員がメリットを享受するようにしていました。

 

上記の7点に加えて、社員が喜んで全力を果たす組織を作る方法として、社員の思考を刺激する質問をすることとの記述もありますが、これも私が全体構造の内臓に相当する部分で「適切な質問をする」ことの重要性に触れ、自ら考える風土作りを目指すと主張していることに通じます。

 

企業風土を造るには相当な努力が必要です。しかも、経営層は当然として、全社員を巻き込み、たゆまぬ努力をすることが必要です。それでもある段階で所定の企業風土らしきものができてからの経営は、非常に楽しいものです。社員の幸せのために行う施策が、結果として顧客、株主、金融機関の利益にも通じるものになるのです。皆が得をする「三方一両得」の経営になるのです。

これまで『一緒に仕事をしてよかった』の本を引用しながら、良い企業風土づくりに必要なポイントやその造り方の要点を述べてきました。 ここで忘れてはならないことがあります。信頼ということです。組織の中のあらゆるところで信頼関係は不可欠です。口だけでなく本心からの信頼関係が樹立できれば、企業風土は確固たるものになります。

私の著書、『これからの課長の仕事』でも述べましたが、私も経営者として社員との信頼関係が「できた」と思った瞬間を明確に記憶しています。一生懸命経営をして社員の幸福のために努力をしていたら、社員がそれを認めてくれた瞬間です。基礎ができたので、それ以後の経営は上モノをどんどん建てても決して崩れない磐石なものになりました。

「園山征夫のビジネスコラム」の中でも、信頼関係の重要性についてくどいくらい触れています。これさえあれば、大抵のことは成就できると思うからです。『一緒に仕事をしてよかった』の本の著者が一番主張したかったことは、信頼関係ではなかったかと思うので、今回はそれを紹介します。

著者は、第1章の冒頭にある事例をあげています。

1959年6月30日、2万5000人の観客が見守る中、フランス人の軽業師「偉大なブロンヂン」(ジャン・フランソワ・グラフレ氏)が、ナイアガラ瀑布に張った直径8センチのロープの綱渡りに成功した記憶に残る一日のことを記述しています。

何回も成功するうちに、軽業師が「手押し車を押して綱渡りをしたいのですが、どなたか乗りませんか?」と、半ば冗談で質問したところ、場が静まりかえりました。命知らずの綱渡り、しかも、ナイアガラ瀑布、さらに、手押し車に乗せられては成功の確率は疑問なることは誰にもわかります。従って、静寂。その時、軽業師のエージェントの男が名乗りをあげたとの内容が記載されています。口先だけでなく、本心から信頼を寄せてくれる人がいたのです。軽業師は深い感銘を受けたと書かれています。

本当の信頼とはどういうものかを非常に端的に表現しています。しょっちゅう違うことを発言しているようでは信頼の序の口以前です。1000回の浮ついた言葉より、たった一言で人間の心が動かされる瞬間を見る感じがします。

 

企業風土こそ重要との海外での主張(1)

Posted on 2013-09-05

 ここ数カ月あまり生産的でない事件のために浮かない日々が続いていました。ところがある日、中央林間のある本屋さんで私にとって決定的な本に出会いました。それ以来毎日「わくわく元気」な日々を送っています。是非、この事実と本の内容を「園山征夫のビジネスコラム」の読者の方々にお伝えしようとはしゃいでいる次第です。

 

ある出会い

 『一緒に仕事をしてよかった』という奇妙なタイトルの本を見つけました。2013年8月のある日です。

 日本経済新聞社から2013年5月に発刊(匝瑳玲子氏が翻訳)されたもので、Adrian GostickとChester Eltonの共著です。彼らはカルチャー・ワークスの創業者であると巻末の著者紹介に記載されている如く、職場環境をテーマにした本を多数出している方々だそうです。私がはしゃいでいる理由は簡単です。その本が『これからの課長の仕事』(2011年9月)『これからの社長の仕事』(2012年1月)(両著はネットスクール出版)の中で私が主張している経営手法と実質同じことを述べているからです。

  多少の違いはあっても、経営の、人の心の琴線に触れる部分が如何に重要であるかについては本質的な違いがないことを、この本からも確信しました。あわせてこの本の内容が期せずして、『「農耕型企業風土づくり」を通じて企業を中・長期的に発展させる経営手法こそが今求められている』こという私の主張を、海のむこうから側面サポートをしてくれる資料的役割を果たしてくれていることに感謝します。

 実に嬉しいことす。海外で主張されていることを鼻高々で日本に導入する学者もいますが、私としては、私が日本での経営について全く独立に主張していたことと同じ主張をする人が、期せずして海外にもいたことが素直に嬉しいのです。しかも相当のデータも補助資料として開示されています。私の主張全体を理論的背景としながら、個別のフェーズに関して各種コンサルティングやコーチングなどで活用するバックボーンにするための有益な援軍となる本だと勝手に位置づけしています。

 

好業績をあげる企業文化のポイント

 ここで『一緒に仕事をしてよかった』で記載されているポイントを皆さんとシェアしましょう。この本のポイントは、好業績をあげるカギは、リーダーやマネジャーの努力以外に何かあるはずだ。それは企業文化にあるというものです。

 彼らは企業文化と翻訳しています。私の言う企業風土は多少東洋的ですがほぼ同じと考えて結構です。これこそ企業が競争優位に立つための「最大の差別化」になるという私の主張と同じことを述べていると思います。

 引用しますと、「ゴールドマン・サックスのジョン・F・ロジャーズ主席顧問は、企業文化のきわめて重要な役割についてこう述べている。『わが社の社員は競合他社の社員と同じ飛行機に乗って移動します。宿も同じですし、クライアントも重なっている場合が多い。だとすれば、仕事ぶりと企業文化を連動させて競合他社と差別化を図るしかない。だからこそ、わが社独自の企業文化が必要なのです。企業文化こそが、私たちを結びつけるものなのですから』。私たちは彼の言葉に感動した――企業文化こそが他社と差別化し、私たちを結びつけるものなのだ。」

 好業績をあげる企業文化には以下の3つの要素が揃っていると、かれらはその著書で主張しています。

 まず、第一に「愛着心」です。愛着心を持った社員は自発的に努力をする意思を持っており彼らは組織のミッションと価値観を重視すると。

 第二に、「活躍の支援」と表現するものです。社員が活躍するには、障害を乗り越える上で必要な情報、適切な備品や設備を与える必要があると。

 第三に、「活気づけ」です。会社から活気づけられることで、社員は自分が高く評価されていると感じ、やる気になるというものです。

 

私の主張との類似

 言葉は少し違いますが、『一緒に仕事をしてよかった』の中での主張の内容は、「農耕型企業風土づくり」で企業を中・長期的に成長発展させる「フォーミュラ」や「定石」などで私が主張していることとほぼ同じです。

 第一の「愛着心」ですが、私は愛着心を持つために、喜びも苦しみも分かち合う「湿り気のある人間関係」をつくる(定石 7)ことを強調しました。「湿り気のある関係」が米国人にどう理解されるかを彼らと一度議論してみようと個人的にワクワクしています。

 第二の「活躍の支援」です。私は「『場』をあたえる」(定石18)ことを重視しています。社員が活躍できるようにシステム化すること生産性アップを援護するのは当然として、彼らが持てる才能をふんだんに発揮出来る「場」を用意することがポントと見ました。私の本の中にいろいろな事例を記載しています。

 第三の、「活気づけ」ですが、これをいろいろな形で実現しようと私は主張しています。経営理念の浸透を惜しまず(定石6)、経営者と社員、社員間の信頼関係をつくり(定石3)ながら、いろいろな仕掛けを使って社員をわくわく元気にするものです。

 結論から言えば、「社員が幸せになる」ように各種施策を実行することで、経営理念への本心からの賛同や、良き人間関係を通じて社員の愛着心につながり、彼らが会社内で自己実現を出来るような支援を施し、各種「仕掛け」を通じて社員を活気づけてモラールアップさせる方式です。表現の違いはあるにせよ実質同じ内容です。信頼関係を基礎としたオープンな企業風土を造ることです。

 

 データでの証明

 『一緒に仕事をしてよかった』の本の中に面白い情報が開示されています。私はこの本を読むまでその調査がなされたことを知りませんでした。

 アメリカ国内とは言え、経験値のみでなくこのようなデータがあることに、実は武者震いしました。日本国内でこのようなデータを集めようと考えていた矢先だったからです。実証実験をして、いろいろなワークショップでの議論に役立てたいと考えていたからです。

 その調査とは、タワーズワトソンによる大規模調査です。「好業績企業の内部は如何に機能しているか」に関わるワークフォーススタディーの調査です。私自身まだ調査の実際の内容を見ていませんが、是非、内容を吟味してみたいと考えています。

 調査は2009年から2010年の2年間かけて700社、約800万人分のデータを集積し、好業績を誇る25社(社員約30万3000人)を抽出したと記載されています。「その25社の財務成績は競合他社より2~3倍の差をつけており、世界でひとにぎりしか存在しない高業績企業の中でもトップレベルである」とも記載されています。

 この調査から「以下のような大きな発見があった」とこれまでの主張を調査分析で裏付けています。要約しますと、

1.企業文化が、会社へのコミットメントとさらなる努力をさせる高いレベルの社員の愛着心を創出していた。

 2.企業文化が、生産性と職務遂行をサポートする環境を整え、社員が活躍を支援されていると思えるようにしていた。

 3.企業文化が、社員が仕事を通じて幸福感とやる気を感じられるように活気づけていた。

 上記の内容は私の経営経験ではごく当然なことですが、これが信頼性のあるデータで裏付けられていたことに本当に身震いがしました。

 今後、日本でもこれに関連するデータを集積の上、本質的なものを抽出していく予定です。ぜひ、皆様のお力をお借りしたいとお願いします。

 

 

日本文化と自然環境

Posted on 2013-08-29

 私はこの分野の専門家ではありません。ただ、経営をしていく過程で「日本的」な企業風土の重要性に気づき、これを推進するには少しでも日本文化のことを理解しようという思いで勉強しました。そして日本文化を議論する時に、どうも根底では自然環境が大きく左右するのではないかとの結論にいたりました。

 

島国と大陸

 古い時代には、島国である日本に海外からくるのは大変だったはずです。1万年前に日本列島が大陸から分離されてから、日本にくるにはまず船をつくらねばなりません。そのための造船の才能や風にのる工夫、船の中での沢山の人の統率など組織を動かす才能のある人々が日本に流れ着いたと想定されます。

 自然環境が異なると人間観も異なると思われます。著書、「これからの課長の仕事」の本の中の、「農耕型企業風土」関連で一部このことに触れました。

 大陸を考えてみましょう。そこでは大移動をしてより環境の良い洞窟を発見し、その中で生活を守る、敵から家族を守ることが必要です。以前アメリカの西部で原住民の洞窟遺跡を見ましたが、そこを中心にして一族の安全を守り生活を営んでいたことが容易に想像されました。古代ローマ人のケルト人やゲルマン民族の侵略は有名な事実ですが、強者は大移動を重ねて侵略の歴史を綴っています。

大移動や食料を求めた侵略については、司馬遼太郎著の「項羽と劉邦」を読んだときに「食料を求めて何故こうも侵略と大移動を繰り返さなければならないのか」と最初はストーリー展開に違和感を覚えたほどでした。勉強するうちに大陸の自然環境の悪さを前提として、このストーリー展開を理解できるようになった次第です。

 誰が誰を侵略してどの地域の食料庫を確保して優位に立ったか、食料庫を取られて味方が離散してしまったか等の記述の連続です。これらのことは、争いに備えることを人間観の根底に置くことにつながります。戦争や闘争が常態化し、民族の遺伝子の中にこれが刷り込まれているのではないかと思うほどです。

 

日本の自然環境

 ところが日本では、水や森が近くにあり、川で水をくみ、森で木の実をとる。あまり遠くに移動をする必要がありません。自然に営まれ、狩猟、採取、漁労を皆でする習慣になり、争う生き方が前面には出ません。誇るべき人間性にあふれた幸福な文化ではないでしょうか。

 西洋では争いごとをどう処理するかで民族主義や哲学が早くから発達しました。キリスト教、新約聖書にはモラルや道徳が書かれていますが、日本ではある段階までこのようなことは必要ありませんでした。604年になってやっと「十七条憲法」として最初に道徳規範が聖徳太子により打ち出されたほどです。 その根底には神道の自然崇拝、「大和こころ」と呼ばれるこの言葉が人々の生き方や道徳をまとめています。災害も含めて自然に任せればよいと我々日本人は自然を受け入れて得きました。

 先般皇居の中を散策してみました。広すぎて一部しか見ていません。迷子になりそうなほどの広さです。日本の首都のど真ん中にほぼ原生林に近い皇居があり、そのことに誰も違和感を覚えないのが日本人です。海外に行くと、都市の中心に長方形の広場と教会があるのが一般的な風景です。われわれは西洋の最初に神ありきでなく、混沌とした自然があることを前提にしています。言葉の文化の前に自然の営みがあることです

 

富士山

 葛飾北斎の「富嶽三十六景」(実際は46景)の半分が富士山をモチーフにした作品です。江戸が富士に守られているそのテーマが、セザンヌ、モネ、ゴッホに衝撃を与えたのでしょう。自らそのまま自然を受け入れるこの姿勢こそ「大和こころ」につうじることです。関東大震災の不幸も日本人の秩序正しい行動や忍耐強さが日本人を取り巻く自然と無関係ではないと考えます。

 日本人が生きて生活している自然環境の経営への間接的影響を確信している次第です。

 

会社の成長スピードに則した経営と人材になっていますか?

Posted on 2013-08-22

 組織の新陳代謝や活性化をどう考えるかです。私の経験では、会社が成長するに従って経営層をふくめた昔からいる社員の処遇の問題がどこかで必ず発生します。

 一般論としては年代の差による社員の能力の差は歴然とあります。以前からいる一部の経営者や社員が若手の社員より実力が傾向的に劣ってくるのは致し方ないものです。会社の成長に則して経営者やその人自身が成長しない限り、厳しいことですが現実にはそうなります。

 

会社の器の大きさに合う人材の補強と過去貢献した社員への情け

 会社が小さい時には、その時の経営者の器の大きさに合った人しか採用していません。ところが仮に、100億円という規模を狙う会社に会社自体の器が大きくなると当然新しい人材が必要となります。「破れ鍋に綴蓋」と似たもの夫婦を呼ぶことがありますが、経営者や会社と社員の関係もほぼこれと同じです。100億円の規模の鍋には新しい綴蓋、人材が必要になってきます。

 会社の器の大きさが大きくなった時、会社が小さい時の経営者が交代をしていたり、その時に採用した社員が会社の成長においつくか、もしくは、新しく採用した優秀な若手の社員に仕事を任せる事になるのが当然です。この時、前からいた社員から不平不満が出て来て社内の雰囲気が一挙に悪くなる事態が発生しやすくなります。

 そうならないために、普段から会社が大きくなると経営者もふくめて新しい優秀な人材に助けてもらうこと、そのような「新しく若い人が皆の上司につくこともありうる」ことを日常的に理解させたり説いておくことが大切です。古参の人には若手の上司のもとで、その人の特技と能力にあった仕事とポジションを与えることになります。ただし、情けを持って接しなければなりません。過去貢献してくれた人材です。それでも不満な方には最後は「泣いて馬謖を斬る」ことも必要となることもあります。

 

層を厚くするための人材の育成

 会社の活性化のためには、なんといっても優秀な人材を沢山持つことです。

 営業を例に挙げましょう。多少の誤解を恐れずに言えば、人間性という視点からすると周囲から芳しい評判を聞きにくいこともあるようなタイプの人材が、営業的には高い成果を上げるのを良く見かけます。お客様への入り込み方やお客様の説得の仕方など、どれをとってもどういう訳か抜群に秀でており、常人が簡単には真似できないような人です。

 この様な人の営業方法は、教科書的に真似ようと思ってもまず上手くいかないのが現実です。生き方の尺度が違い、その人は常人とは全く違う特別な才能の持ち主であるからです。ただ、そのような人によく見られる弱点は、単独で注文を取るのはすこぶる上手いのですが、人に教えることは苦手というか、そもそもそのような考えを持たない人なのです。

 

周囲が魅力を感じる人材と経営センスの教育

一方、天才的な人ほど抜群の成果を残さないが、周囲も人間的に魅力を感じる様な人もいます。ここでも営業マンを例にお話ししましょう。継続的に注文を獲得して会社に貢献し、その営業方法を周囲の人も「真似できなくはない」と感じるタイプの人です。多少問題はあっても、他の営業マンがその人の営業スタイルに魅力を感じ、「見習いたいな」と思うような人です。

 会社の経営上は、この後者のような営業マンに経営の考え方や仕組みをキチッと経営指導して、彼のような上司に育成したい部下を持たせ任せるのがいいのではないでしょうか?そうすると、営業マンが育ち、そのことによって組織が活性化してきますので、会社にとって非常に貴重な人材です。

 営業は頭の良さのみでなく、営業感など他の要素も兼ね備えなければできない難しい仕事で、この様な才能の持ち主は世の中にそう沢山はいない、このことを感謝する姿勢こそ、経営的に重要であると認識することです。

 他方、地道にコツコツ営業をするが実績が伴わない営業マンには何かが欠けています。この「何か」を、上記のような人に実地訓練や研修などの場で教えてもらうのが営業マンの育成と組織の活性化の近道と考えます。

 

新人の採用――「能力あり」でも、人間性は?

 並行して、会社の今後の発展に貢献する新人の採用に常に意を払うことです。ただし、能力のみで採用しないことです。どんなに能力があり賢い人でも、人間性が劣る場合は絶対に採用しないことです。

 これを見分けるのに個人的には少し役立った方法があります。「あなたがこれまで一番気合を入れて仕事をしたと思うのはいつ頃、どんな仕事で、何故そう思いますか?」と面接時に質問を投げかけることで、本人の本当の姿を少し観ることができました。本人が準備していないかもしれない突然の質問には、どうしても本音が出やすいのです。自分の手柄のみをとうとうと主張する人もいます。権力になびいて、その時に合わせて自己の主張をいとも簡単に変える人も見抜けます。

 それでも、その人の人間性は簡単に見抜けないこともありますから、私も何度も痛い目に会いました。一般的な面接のみでなく、いろいろな場を設けて多面的にその人柄をみるしかありません。その人の評判が本人の周囲から取れる場合は、これが決め手になることもありました。人間の行動パターンはそう変わらないからです。

 人間性が劣る人は周囲の人を巻き込んで「村」を作る傾向があります。村の内部の主張を全面に出すことで、力を誇示するタイプです。皆さんの会社でこのような人を間違って採用していませんか?このような「村」を即分解するのがその企業の発展のためです。